ダイバーの正体に迫る本企画、24人目はホッシーパパさんです。よろしくお願いします!

ホッシーパパさんプロフィール

現在ダイビング歴もうすぐ4年のレスキューダイバー(NAUI)。経験本数は240本。東京在住のケアマネージャー。ベイスターズ、pixiv、アニメや旅も好き。Twitterでは日常や趣味についてつぶやき中。

出会いは最悪。でも、夢のようなダイビングを経験すると…

――まず、ダイビングを始めたきっかけについて教えてください。

2017年の正月、実家に帰省したくなくて渡嘉敷島に逃亡したんです。弟に子どもが生まれて、かわいいんだけど、正月に集まったら「おまえは何やっているんだ」みたいな展開が目に見えたのでどっか行っちゃおうと。その時点ではそこまでダイビングに強い興味もなく正月から「習い事」やるのもなあ…というわけで、講習ではなく体験ダイビング1回のツアーに申し込みました。

ダイバー図鑑

――なるほど。初めてのダイビングはいかがでしたか?

「つっまんねぇ」 ですね(笑)。理由はいくつもあるんです。

まず、そもそも「ダイビングって、ずーーーっと潜っているもの」だと思っていた、という誤解ですね。「ずーーーっと」が具体的にどのくらいか?と言われると困るんですが、とにかく、体験ダイビングはあっという間に終わった…。「え、これだけ?」って感じです。

次にポイント。今思えばすごくきれいな透明度でケラマブルーってヤツだったのかもしれません。けど、はじめてなので比較対象がなく透明度に対して感動がなかった。そんな青い海に白い砂地だったんです。これだけ。なかったんです、魚影が。ポツンってあるイソギンチャクにクマノミがいるの見せられても 「クマノミ知ってるし…」くらいの感想しかなかった。ダイビングって、潜るとサンゴがあって魚影があって、運が良ければカメとか見られちゃうって思ってたんで「 は?なんねこれは…」と

あと、ちゃんとしたショップさんだったんで、オレ1人にインストラクターさん2人ついて「脱力して何もしないでください」って。で、後ろからタンクを持たれて移動させられるだけ。「オレ…なんもしてないやん…」と。

ついでに、渡嘉敷島って1ダイブごとに港に戻るから、石垣島とか父島みたいな「ボード上で楽しく過ごす」的なこともなく。お天気もいまいちで、ウェットスーツ寒いし、そのくせ、インストラクターさんはドライスーツにホッカイロまで貼っていて。なんね。と。恋でいえば最悪な出会いだったのですよ(笑)。

――なるほど。「ずっと潜っているもの」というイメージ、わかる気がします(笑)。水面休息なんてダイバーにならないと知らないですもんね。それに、インストラクターさんにぶら下がって魚もあまりいない海を漂うだけでは、確かに物足りなかったかも…。そんな最悪な出会いだったのに、ダイビングはやめなかったんですね。

そうなんですよね。実は、同じ年のGWに小笠原に行くことにしたんです。うちの職場、365日オープンしていて休みや長期休暇は交代制なんですね。体験ダイビングをした年のGWに6日休めるとわかった時点で、代理店を通して小笠原行きを決めました。小笠原はその前年の正月にも行ったんですけど、印象が良すぎたのと、お見送り船に感動しちゃったせいなんでしょうね…チョロいな。で、前回はまったりハイキングとボート・シュノーケリングをしたんです。 シュノーケリングは後日談として 「あの日は僕自身、船だすと思わなかった」って言われるほどの伝説の大時化で、でも、はじめてのオレは「さすがに外洋はすげえなあ」というのと、そのあとの南島の絶景で満足だったという。チョロいね(2回目)。

そんな、前回があったんで違うことをしたいじゃないですか。で、実は小学校3年生くらいの時にも家族で来たことがあって、そんときに見た境浦の沈没船がダイビングスポットだと。「あ、行ってみたい!!」ネットを見るとGWから9月までの「限定」で、しかも海況がいい時にしか行けないケータ諸島ってところがある!!おお、マグロ穴!!おお、シロワニ!!おお!!すげえ!!見てえ!!行きてえ!!ち、沖縄でライセンス取っておくんだったぜ。今からOW講習受けて間に合うかなーーー。と。

――今度は具体的に見たいものが定まって心に火がついたんですね。

それで、ネットでの情報収集とお問い合わせ電話の日々が始まるんですけど、ここでまた、問題が。

お手頃な講習プランがあるダイビングショップを見つけていざ問い合わせをすると、 「ウェットスーツまで買ってくれたらこの値段です」 とか 「うちのショップで毎月潜りに来てくれたらこの値段です」 とか条件付きなんですね。でも、ダイビングとの出会いは最悪で、恋愛でいうなら恋愛対象としてアリかナシかもわからない段階なわけですよ。それで、「その条件は飲めん…」。あと、日程が合わないこともありました。そんなこんなを繰り返して、いよいよ時間的にヤベエぞ…ってところで、今もお世話になっているブランニューシーの角さん(師匠その1)に出会ったんです。

師匠のダイビングショップも釣り広告は出してます。今でも。ただ、「小笠原で潜りたいから」って問い合わせたら、 「最初は皆さんそうですよ。沖縄でとか、ハネムーンでとか」 って言ってくれて、「フィンとマスクとシュノーケルは購入になります。命に関わるものだから最低限のものは持っていて欲しいし 、スキューバダイビングじゃなくても使えるから」って言われて「それもそうだな」と。これだって都合のいい営業トークだったかもしれませんが、それ以前がそれ以前なんで 「誠実な商売しているんだな」と。チョロいね(3回目)。 というわけで、西湘の江の浦で2日、沼津の平沢で1日講習を受けて、伊豆の地を踏むこともなくOWとAOWをストレートで取って、さも当然という顔でワクワクしながら、おがさわら丸に乗っちゃうわけです。とりあえず、小笠原に行くまで編でした。

――体験ダイビングでは至れり尽くせりすぎて「何もすることがなかった」と感じられていましたが、実際にダイビングの講習を受けてみてどうでしたか?

準備と片付けが難しくて、かつ、面倒くさいと思いました(笑)。ある意味新鮮というか、こういうことを知らなきゃダメなんだーーー、と。この時点で(笑)。

――(笑)。

潜っている時のことはあんまりよく覚えていないんですけど、とりあえず、いまの1.5倍くらいのウエイトをつけてはじめて1人でフリー潜行した時は 「おお、潜れるぞ!1人で」 っていう感動はありましたね。あと、AOW講習でボートダイブ?ディープ?一緒にやっちゃったのかな…その時点で、中性浮力を理解も体得もしていなくて「沈む→キックする→師匠にキックしちゃダメと言われる→やめるとまた沈むからキックする」という流れをしばらく繰り返していました。今にして思うと、明らかに呼吸が単調で浮沈のタイミングに合っていない上に、生意気にもBCの給気にも頼ろうとしなかったので、上記の繰り返しでした。とりあえず「着底しちゃダメな時は空気入れよう」って体当たりで学びましたね。

――最初から中性浮力はなかなか難易度が高いですもんね。しかしです。講習のあとに行く先が小笠原。私もまだ行ったことがありませんが、一般的には中上級者向けのダイビングエリアとして知られています。

改めて振り返ると、徹頭徹尾「無知ってスゴいね」ですね。よくもあしくも。このあたり、器材というか、カメラのチョイスにも続きます(笑)。

小笠原にたどり着く前にちょっと思い出があって。おがさわら丸の雑魚寝部屋で隣になった方がダイバーさんだったんです。すでに600本くらい潜っている。その方に、「AOW講習終わったばっかりです」って言ったら、軽くフリーズされてしまって。これは…場違いなところに突っ込もうとしています?と、その時はじめて気づいたんですね。まあ、決めちゃったし、なんとかなるだろうくらいにしか思っていなかったんですが。

ダイバー図鑑

――小笠原のダイビングショップはすんなり予約できたんでしょうか?

エスコートさんというダイビングショップにお世話になったんですが、予約時に「AOW取りたて若葉マークですよ」ってことはメールに書きましたね。記憶ではさらに「行けるならケータに行きたいです」って書いちゃったんですよね。考えようによっちゃ 「こいつ、ガチでなんも分かってねえ子だぞ。どうすっか?」 って思っていたかもだし、NAUIのネットワークで講習を受けたショップの師匠に様子を聞いていたかもですし、チェックダイブの様子で決めたかもですが、とにかく、行けちゃいましたねえ。逆になんの難色も示されなかったんで、船で言われるまで思い切り過ぎていることに気づきませんでした。

――まあ、その勢いがなければダイビングをもう一度やろうと思えていなかったかもしれませんもんね。では、小笠原でのダイビングについて聞かせてください!どんな日程だったんですか?

今、当時のログブックを見返していたんですが、小笠原到着日・現地出発日含めて4日(半日、一日、一日、半日)あって、ダイビングしたのは到着日と3日目だったみたいです。残りの日程は前回お世話になったネイチャーガイドさんとドルフィンスイムやったりしていました。

ちなみに、NAUIのオフィシャルログブックって、講習用とファンダイビング用が冊子で分かれているんですけど、ファンダイビング用の記入1ページ目が父島・バラ沈(バラバラになり漁礁になっている沈没船)となっていて 「改めて見るとすげえなあ、この向こう見ず感パねえ」って思います(笑)。

ログブック、懐かしいな。当時のエスコートさんの精算したレシート貼ってある!オレ、かわええ(笑)。そのくらい思い出だったし、もう来られないかもくらいに思ってたんですねえ。かわええ。安心しろ、リピートするから(笑)。

――(笑)。

ダイバー図鑑

書き方見本に倣ってちゃんと感想書いてるし。けど、一番大事じゃね?ウエイトの量が書いてない!

ダイバー図鑑

(ログブックを見返しながら)マグロ穴の迫力とシロワニ見られた感激は覚えているんですけど、ログによると 「潜れた!!迷惑かけずにやったぜ!!」からはじまって、シロワニのいた穴の深さ自体に感激してますね。初々しい(笑)。初日にチェックダイブ兼ねて島陰で潜っているけど、ボニンカラーのクマノミとかノコギリダイの群れとかバラ沈に感激はしているのは、まあわかる。下が砂じゃなかったせいか、晴れてたせいか、すごく蒼くて澄んでいたのを覚えています。「あ、これこれ。この感じですよ。ダイビングに求めていたのは!!」って感じですね!

――やっと会いたかった海に会えたんですね(笑)。

(ログブックを見返しながら)ファンダイブ通算2日目の3本目でダイバー垂涎のケータ諸島に行けちゃっていますね。特に船で揺れた印象もなかったからホントに海況よかったんだなあ。

1本目、マグロ穴ではガイドさん(仁生さんだったんだろうか)に「ホッシーさんは僕のそばにいてくださいね」 と言われて、ホントに幼児のようにくっついていました。マグロ穴、激流だった!!でも、そもそも流れを体験したことがないのと、事前に「岩にかじりついて動きます」って言われていたので、怖さも難しさもなし。「中性浮力より簡単だ」としか思わなかった。無知ってスゴいね。マグロ穴すごかったですねえ。銀色のでかいヤツが行ったり来たりしていて。

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2本目は1本目でいなかったシロワニを探しにトンネルだらけのところで潜っていますね。今思えばまさに地形派ダイビングにもなるのかも。いくつかのトンネルを探して、奥の方にいるのが悠然と近づいて来た時はでかくて感激でした。

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小笠原の海中はこんな感じでしたね。バラ沈のデリックのかっこよさとボニンブルー、魚影、マグロにシロワニという大物三昧。さらに父島に帰る途中、ボート上で見たイルカとザトウクジラのブリーチング。

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ここらへんで父島とのリゾラバよろしく、「ダイビングおもしれえ!!」って恋に落ちた感じですね。そして、極めつけは最終日、オーナーの太田さんからの口説き文句です。 「ホッシーさん、よかったですね!ケータも行けちゃったし。ホッシーさんも、もうダイバーだからまた潜り来てくださいね」と。 「あーーー。オレ、ダイバーなんだ。ダイバー。ダイバー。なんだこの甘美な響きは!!そうか、ダイバーか。そうだなあ。もっとあちこち行きたいし、また来たいな」ってなるわけです。チョロいね(4回目)。

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――(笑)。そりゃあ、こんな海じゃ悩殺されてしまっても仕方がないです!

ただ、この運の良さはあとあと悪影響だったかも。いきなり大物を見に来て、すんなり見られちゃったから。伊豆にこんなヤツらはいないわけで、この時点ではノンダイバーでも知っているような大物に夢中で、まさか「海中で壁の人(後述)」になる楽しみなんて知るよしもなかったし、マクロの楽しさを理解するのに人よりだいぶ時間がかかることになっちゃいましたね。

あと、カメラ。この時点では続くかどうかわからず、かといってカメラも持たず行くなんてあり得ない。ハウジングも外付けストロボもライトなんて知らない状態でとりあえずお手頃なヤツ、ということでFUJIのFinePix120を買ったんですが…20m防水では足りないということや、付属ストロボじゃあワイド写真を撮る時にノイズになってしまうとか知らなかった。結局、シロワニの写真は青かぶりバリバリのこれじゃない感たっぷりで 「次はキレイに撮る!」と思ったんで、その点でも、この安物買いはダイビング沼にハマるきっかけだったのかもしれません。

――なるほど。さて、見どころ満載の2日間を過ごして完全に恋に落ち… でも、実はその時点では、ダイビングというよりは小笠原の海に恋していた…んですかね?

もうラブストーリー路線で行くんだ(笑)。小笠原の海にも恋をしたけど、ダイビング自体も面白いと思いましたね。いや、違うかな。面白いけど、ダイビング自体を楽しむというより、海の中の景色とか生き物を見るために必要な能力、手段という理解だったかもです。

師匠、荒巻さんとの出会い。習得したつもりが鼻を折られ修行の日々

――小笠原でのダイビング後はどうされていたんですか?

小笠原に行ったのが5月で、前述のように弊社は交代勤務なんで6~9月のどこかで3日間の夏休みが取れるんですね。続けても、ばらしてもいい。

小笠原でのダイビングでシロワニを見ました、船からはクジラもイルカも見ました。じゃあ次は?マンタだろーーー!わっかりやす!となり、そのためには定期的に潜らないとねってわけで伊豆に通うことにしたんです。ここで、2人目の師匠である、サザナミマリンの荒巻さんに出会います。

――OW・AOW講習のダイビングショップとは違うショップですね。

実は、小笠原のおみやげを持って講習でお世話になったブランニューシーに行ってみたけど、器材を買った人対象のメンバー制ショップだから特に勧誘されなかったんです。「ま、いいか。ツアーも人数揃わないと行けないし」ということで、改めてショップさん探して。Cカードを取ったNAUI系列のダイビングショップを探してみると、

  1. 1人からツアーあり
  2. レンタル無料

というショップを見つけました。それが、サザナミマリンさんだったんですね。 さっそくメールして、自分の都合とかこれまでのことを伝えて最初に行ったのが南伊豆の秘境・中木!!おいおい、またいきなりだな(笑)。

――魚影が濃く、ダイナミックな経験者向けのポイントですね!どうだったんですか?

ベテランさんに混じって、超アウェーでしたねえ。バックロールのタイミングがずれていたとか、器材がうまくセットできんとか、急浮上しちゃうとかダメダメだらけだったのしか覚えていない。あ、レギュ咥えずに潜降しようともしたな…。けど、2本目にちょっと浮いているのを感じられて、それが中性浮力への意識の最初だったのかもですね。

それから1ヶ月か1ヶ月半ごとに通って9月に石垣島に行きました。たぶん、この頃には神子元でハンマーを見たくなっていて、そのために本数稼ぎつつ上手くなりたいと思うようになっていましたね。この時もまだ、ダイビングは面白いし楽しいけど、それ自体を楽しんではいなかったですね。生き物の知識もないし。

――2人目の師匠、荒巻さんとの出会いはインパクトありましたか?

そうですね。インパクトありましたね。というのも、最初に行った場所が中木という経験者以上の人が行くところだったのもあって、明らかにヘタクソだった。講習はヘタクソだったけど、父島で潜れたんで「いけるやん」って思っていたオレは、いい感じにポッキリ鼻を折られましたね。ぶっちゃけ、1〜2回目はちょい怖っていう印象はありましたね(笑)。自分の本数が神子元に行けるくらい溜まったあたりで、荒巻さんに 「スキル的には問題ないので、今度は神子元いきましょうか?」って聞かれた時はうれしかったです。

荒巻さんはオーバーウェイトに厳しくて、ボンボン、ウェイトを外されました。「20mくらいから身体が立っているからまだ重い」とか 「安全停止でBCに空気必要はハズないからまだ外せる」とかちゃんと理由を教えてくれて、いつ同じ場所に潜りに行ったかも結構覚えていて、ペラペラっとログをめくって 「ね、前回はこれしかエア残ってなかったでしょ。あの時よりウェイト2キロも減らしたけど平気だったし、動くの楽だったでしょ。で、こんだけエアの残りに余裕できるのよ」とトドメを刺してきます。説得力がすごい。そうやって鍛えられたので、自分でリゾート行ってウェイトを微調整する時にも 「あ、まだ外せるな」とわかるようになりましたね。「肺で調整する」は、たぶん永遠にわからないと思うけど。

――うわー!そういう方に教わるのすごくいいですね!わかりやすいし、ちゃんと考えて行動できるダイバーに近づけますね。いいなあ。

ウェイトに関しては最初のころだけじゃなく、ウェットスーツからドライスーツに変わったり、タンクがスチールからアルミになったり、本数が増えたりするごとに調整されました。あと、荒巻さんには海中での姿勢やBCの使い方、インフレーター使うときの姿勢など基本への忠実さを繰り返し求められましたね。

それから、伊豆ってマクロが楽しめるポイントが多いんですが、荒巻さんはウミウシラーで、マクロハンターで、壁の人なんですよ。なので、荒巻さんから伊豆ダイバーの潜り方を見様見真似で学びました(笑)。

――さきほどおっしゃっていた「壁の人になると思わなかった」の件ですね。

ダイバー図鑑

見つけて示された生物は諦めずに見ようとすること。「よくわかんないから撮影いいや」って離れようとすると、ガッて掴まれて「ココだよ!!」って意地でも見せられる(笑)。ログ付けの時にも「あれもいたよね。これもいたよね」って列挙されて、最初は「そうでしたっけ???」ってな感じでした。生物の名前覚えないから、今でもあまり変わりませんけどね(笑)。

だから、最初はウミウシにかける情熱に温度差を感じましたね。自分はどっちかと言うと、伊豆ならソフトコーラルとか根魚とかわかりやすくキレイなのを見つつ、「いい感じに浮いているぞ」「おっしゃ、あんまり、エア減ってねぇぞ」とか思うタイプだったんで。今風にいうなら「ウミウシラーにはならない。君と俺とでは価値基準が違う」みたいな感じでしたね。

――煉獄さん(笑)。

ダイバー図鑑

じゃあ、なんでお付き合いを続けているかっていうと、行く先を完全にゲストのリクエストに合わせてくれるので、ネット見て「あ、今度はココ行ってみたい」という声に応えてくれる。あと、月1くらいで神子元にツアー出していたので、「通い詰めて神子元に連れて行ってもらいたい」っていうのもありました。もちろん、既に入っている予約日の行き先を見て「いいね、いいね」みたいに参加することもあります。もうひとつは、やっぱり人柄ですかねぇ。

けど、お付き合いを続けて自分でもマクロ写真が撮れるようになると、「ちっちゃいもの倶楽部たちかわいいやん」ってなりましたから、よかったと思います。

――ブランニューシーの角さん、サザナミマリンの荒巻さん、小笠原のエスコート太田さんと印象的なインストラクターさんとの出会いが続きましたが、師匠と呼びたくなるような方と出会うには何か秘訣があるんでしょうか?

出会う秘訣ですかー。自分の場合は運とか縁だったと思います。あと、NAUIにこだわったのが結局はよかったのかも。荒巻さんと角さんは同じくらいにインストラクターになって、ずっと知り合いで、お互いにスキルを認めあってる間柄だったみたいなんで。そういう人たちの中に入れたのは指導団体にこだわったからかなと。それと、結果として、沖縄で取らずに都市型ショップにリピートしたんで馴染みになれたことですかね。

現地サービスでも、ホームグラウンドのショップさんを決めて通い続けるといいかもです。で、もし、その時点でマクロとか地形とか好みが決まっていたら、それで場所やショップさんを選んでみるのはいいかもです。

まあ、自分の場合は、もともとがチョロい上に出会いが最悪で、その後の出会いは何を見て誰に出会っても素敵に見えたのかも。けど、みなさん、あんまりガツガツ稼ぎに来ない人たちだったのも懐きやすかったですね。シミランクルーズにあたってダイブコンピューターや器材一式揃えたのを機にブランニューシーとも復縁して、ブランニューシーとサザナミマリンで月1〜2回ペースで伊豆に行くことにしています。

大物、誕生日お祝い。思い出深いシミランクルーズの顛末は…

――ここまでも十分ドラマティックなエピソードてんこもりでしたが、引き続き、印象深かった海について聞いていきたいと思います!まずはシミランクルーズから。

年が明けて2018年のお正月のことです。 前年、年末年始に出勤していたおかげで、またもや6連休が発覚したんですね。この時点では、小笠原でサメ見た。石垣でマンタ見た。じゃあ、次はクジラかジンベイザメでしょ。あ、アシカもいいな。と。ここまでで分かるように、まだ、ハゼや甲殻類やウミウシのきゃわいさに一切目覚めていなかったことも手伝い、そして、ベイスターズを追って西へ西へ行っちゃって、気持ちがでかくなっていたんですね。心は海外でした。

で、パスポート作りつつ、ネットでツアー会社を見てみると…グレートバリアリーフのクジラも、ラパスのアシカも時期じゃない。オスロブではジンベイザメが餌付けされていてほぼ見られるけど、うーん。ワクワクが足らん。モルディブのダイブクルーズかっけー…たっか!!ムリムリ(笑)。おお!タイのダイブクルーズ!! ジンベイザメ!!値段…もうちょい安くならん?…というプロセスでターゲットはシミランになるわけです。

ただ、飛行機付きのツアーだとこれ以上安くならない。なら現地の代理店を探そうってことで、ほうぼう屋シミラン店の伊藤さんと出会うんですね。運命的に。時差があるのに毎回24時間以内には返信をくれて、ホントになんでも答えてくれてめちゃ面倒見がいい方なんです。英語に不安があったり手間だと感じる人の強い味方というか。そんな彼のメールには心強くこう書かれていました。

「このツアーには弊社日本人のスタッフは乗船しませんが、弊社を通じて4名の日本人の方のご予約を頂いております」

自分は日本語しか話せないことを伝えていました。そして、このお返事です。 これをホッシーは「スタッフに日本人はいないけど、日本語通じる人はいるから大丈夫ですよ」と解釈しました(笑)。そして、ソッコーで仮予約をお願いして 「いかに安くタイに行くか」のみに注力するのです。ですが、時は年末年始、LCCであっても安くはない。ちょっと待て?これ、成田と羽田で検索してるからじゃね?関空かセントレアなら…あった!!予算内、けれど…香港で乗り継ぎが6時間…日本発28日じゃないとダメ…あ、職場にみんないるじゃん!しれっと休んじゃえ。

「そんなだからみんなに嫌われるんですよ。ホッシーさん(胡蝶しのぶの声で)」

そんなこんなで12月27日に仕事を納め、パスポートを持って意気揚々と毎度お馴染みの鍛治橋高速バスターミナルに向かうのでした。空港のある名古屋に向けて。

――出かける前から濃いですねえ(笑)。

ちなみにプーケットにつくのは夜中の2時。香港のトランジット時にプーケット空港近くのドミトリーの女将さんと通訳アプリを使いながらFacebookでやりとりして、空港にてピックアップ。その翌日の昼に、今度はダイビングサービス「カオラックスキューバアドベンチャー」の送迎に乗り込む。かくして、齢40の日本人は無事に現地ガイドの元へとたどり着き、船に乗ることができたのでした。

ダイバー図鑑

――海外へ行くのに宿も飛行機も自力で手配して、やりとりもご自分でって旅慣れていらっしゃいますね。もともと旅行お好きだったんですか?

死んだおばあちゃんが旅行や海外大好きでおばあちゃん子っだったんで何回か一緒に行きました。けど、バックパッカーみたいなことをしていたわけじゃないです。

どっちかっていうと、ダイビングを始めるちょっと前から個人で国内旅行するようになっていて、それがそのうち夜行バスでの弾丸ベイスターズ応援遠征や、石垣、小笠原でダイビングする個人旅行になっていった感じ。海外も、まあムリにふらふらしないで飛行機で目的地まで行ってピックアップしてもらうだけならできるじゃろ、と。それに、1回目で乗り継ぎがあったり、飛行機が着いた夜中に宿の人と待ち合わせしたりってハードルが高いことやっちゃったんで、2回目以降JALで行くのは余裕でしたね。「なせば大抵なんとかなる」です。某アニメに出てくる勇者部五箇条のひとつですが、なかなかバカにならないですね。

ちなみに、ホッシーはどこかに行く時には必ずお土産を持参するのですが、この時は東京駅で買った雷おこしとキットカットを持って行きました。雷おこし、自信あったのよ。日本の伝統的なスナックとして。結果、惨敗…。「ホッシー、チョコレートありがとね」と言われることはあれ、手渡した後に雷おこしを目にすることはなかった… 翌年からはキットカット(特に抹茶)一本にしました(笑)。

――(笑)。

さてさて、初めてのダイブクルーズです。この時点で経験25本くらい。しかも、海外で日本語しか話せない人が。それを知った同乗する日本人の方には「思いきりましたね。怖くなかったですか?」って言われたんですが、外洋は小笠原で経験済みだったし、日本人乗っているから平気だって言われたので(正確には言われていない)と。まあ、翌年以降も日本人がいなくても 「なせば大抵なんとかなる」で何とかなってきたので、日本人がいる日はチョロかったですね。実際。

スキルに関しては当時の自分がどのくらいだったかは客観的にはわかりません。 ただ、チェックダイブで中国の方と一緒に潜ったんですが、途中から1人のガイドさんとマンツーマンになって、2人だけずっと潜っていました。自身初の1アワー!!カメも見られちゃったりして、浮上した後に「お前、上手いじゃん」みたいなこと言われて、そのあとは晴れて日本人のグループに加えてもらえました。すごく流れているポイントでも同じメンバーで潜れたので、この経験はひとつの自信になりましたね。適度なタイミングで荒巻さんにへし折られることになりますけど。

クルーズの1日目は夜船に乗って出発するだけで、2日目の夕方は無人島で1時間くらい遊ぶんです。そこの岩の上から見る景色がホントに泣きそうになるくらいキレイで。「ああ、来てよかったな。もう来られないだろうな」と。 絶景にセンチメンタルになっていました。出航前、船上でお誕生日お祝いされている過去のクルーズのDVDを見て「あ、これいいな。今度は誕生日に来たいな」と思ったのはサクッと忘れて。

ダイバー図鑑

夜には翌日のブリーフィングがあって。「明日の起床は5時半だぞ」と言われたら、昔ながらの周遊ツアーとかだと「えー」ってなるじゃないですか。けど、1日の流れが、起きる→潜る→朝飯→寝る→潜る→お茶して寝る→潜る→昼飯→潜る→おやつ食べて寝る→潜る→晩飯、軽く呑む…の繰り返しなのです。ほぼ、イグアナです。潜る、冷える、温める、潜る。なんてすばらしい。当時はスケッチログを付けていなかったので、休憩中はデッキでの甲羅干しに全振りです。

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その年のシミランは確か、とても流れていたけど、そこそこキレイでした。そして、なによりも圧倒的な魚影!!!日本でも神子元や初島のタカベとか小笠原のカゴカキダイの群れとかありますが、それがもっと凄くてゆったりなんです。手を振るとそれに呼応して魚影が動く。ハードコーラルもソフトコーラルもある。色とりどり。それが当たり前のように続くので、大物が出ないと「ハズレ」感があるくらい。そんなのを15回繰り返したわけです。食事と昼寝を挟みながら、ひたすら。チョロい40男が恋に落ちるには十分でした。

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結局、その年はジンベエザメにもマンタにも会うことはなかったけれど、「これはたまらん」「やめられん」「ジンベエ見ていないし、見るまでリピート決定だわ」となったわけです。ついでに船上でお誕生日を祝われてチヤホヤされたいという邪な野望も加わって。

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そんなわけで、チョロいオッサンは、1人で海外に行けた達成感とともにやり残した感を胸に帰国して、結局、2019年、2020年と誕生日に合わせてホイホイ通うことになるのです。ベイスターズといい、小笠原といい、シミランといい、神子元といい、悪い女に簡単に引っかかる。ホント、チョロいね(笑)。

――いやあ、貢ぎますねえ(笑)。でも、すごく楽しそうだから仕方ない!

2回目のシミランは2019年ですが、その時はすでにスケッチログを始めていて 「見られちゃうなーーー」 「はずいなーーー」 と思っていたんですが、背に腹は変えられずダイニングデッキで描いていたら…なんかウケた。乗っていたゲストみんな来た!!バカウケ。「SO COOL!!」とか言われちゃって、最終日には写真を撮られまくりました。

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海は前年より穏やか、かつキレイだったけど、この年も大物はなし。ついでに、お願いしていたんだけど、誕生日は特に何もありませんでした。旅そのものは順調で、船を降りた後ホテルに晩飯がなく朝まで水2本で過ごしたとかはありましたが、JAL利用で快適だったし、朝5時に羽田に着いてその足で出勤成功しました!いぇい(笑)。

――すがすがしい顔で出社して嫉妬されるやつです(笑)。

そして、去年です。ホッシーさんは学んでいました。高を括っていると船の空きがなくなることを。なので、半年前に予約しました。誕生日を挟む最高の日程で。前年のJALは快適だったけどちょいお高い。もうちょい安いところは…あるじゃん!シンガポール航空。往復5万!!やっす!即予約!さあ、準備万端!楽しみだなーーー…と思っていたところ雲行きが怪しくなってきたのが、あの殺人新型ウイルスの噂でした。当初、対岸の火事だと思っていた感染症はクルーズ船での集団感染と他国への流出によって、まず、ダイブクルーズに人が集まりません。さらに飛行機が欠航になり結局JALに変更を余儀なくされ。さらに了解を得ていた職場からも感染リスクを理由に難色が。結局、期日ギリギリでクルーズ船が出る最低施行人数に達して出航決定。会社もオッケーくれてバタバタで出発が決まりました。

今回は、ほうぼう屋の伊藤さんから助言があって、クルーズ船の出発前にスパークリングワインを買ってガイドさんに 「明日、オレの誕生日だからコレでお祝いして」って渡しました。準備万端で出航し、2日の朝イチにガイドのニコから「誕生日おめでとう」 と言われて、ちょっと高まる。今年も無人島からの景色見て、いよいよ晩御飯!!つつがなくすすむ。何事もなく。

「あれ?」って思っていたら、突如、暗転。ダイブライトの明かりをたよりに、チョコレートケーキを持ったスタッフが上がってくるじゃないですか!! あれーーー!?船が小さくて冷蔵庫限られているからケーキはムリって聞いていたのに!えええ!?マジですか!?って驚き、感激しているうちにハピバの歌の合唱になって、ろうそくをフーーー!楽しい!みんな、写真撮る。 おお、楽しい!!「あ、オレのスマホでも誰か」…結局、この時の写真、オレは持っていません(笑)。それから、スピーチ。できん。どうしよう…って思っていたら、ニコが 「コレはホッシーからの差し入れのワインだ。みんなで乾杯しようぜ」みたいなこと言って、みんなで乾杯。ケーキも食べつつ呑みました。ケーキもワインもまだ残っているなって思っいたら、いつのまにか、みんなが銘々に勝手に飲み食いしてなくなりました。外国人スゲエ(笑)。

――クルーズの時期を誕生日に合わせると、こんなに楽しくなるんですね!

ちなみにこの時の海は濁っていました。行く前から、師匠・角さんの情報でわかっていたんですが、実際に潜ると…みどりい!! ここはどこだ?江の浦か?濁って残念な感じの神子元か?みたいな印象だったんですが。もしかしたら、それがよかったのかも。栄養が豊富だったってことで。

まず、パラパラだけど、バラクーダが出ました。

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翌日、潜るたびにマンタが出てくれました!

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ここらへんで既に満足度は爆上がりだったんですが、クライマックスのリチュリューロックでジンベイザメが出ました。違うチームに。「えー。いいなあ。でも仕方ない。同じクルーズのメンバーが見たよ、でもいいか」って思ったら、次の次のダイブで…出た!!ジンベエザメ!!ニゴニゴでみどりい海の中を悠然と、ほわーーー。さくらちゃん(カードきゃぷたー)と、F1バブル全盛期の「セナに逢えたね」の感激状態です。そのジンベエザメはさらにもう2回姿を見せてくれました。おかげでそこそこ近くからの写真も動画も撮ることができました。

ダイバー図鑑

というわけで、イベントをことごとく回収してホクホクで船を降りてニコたちに別れを告げました。

――すごい!大当たりじゃないですか!

しかし、ここからホッシーさんは一転 「ホントにあった怖い話」 を体験するのです。野球の世界では毎年、アホみたいな大逆転が1回や2回あって、ネタにされるものなんですね。9-0だったが9回裏に逆転される、とか。2020年のシミラン旅行はまさにそんな感じでした。お誕生日をお祝いされ、大物、連発猛打賞、大満足で船を降り、夜の食料も忘れずに買い込んでホテルへ。部屋はコンドミニアムみたいな戸建ての部屋。写真にあったはずのプールがないけど、まあいいか。器材を外に並べて干して、ゆっくりシャワー浴びて一息。じゃあ、どうっすかなあ…一応、職場に報告しておきますかね。常識人なんで。

トルルルル(国際電話)

「あ、主任すか?お疲れさまっす。今、ダイブクルーズ終わってホテル入ったんすけど、いちおう報告です。同じ船に中国の人が4人くらいいたんすよ。1人は北海道で仕事場しているとかで日本語通じたけど、他の3人は詳しくはわからないけど大陸の人みたいなの。香港って言っていなかったから。武漢とは関係ないと思うけど、中国の人だったから念のため」

「ホッシーさんいまどこなの?」

「タイ。国際電話っすから」

「ああ、そうなんだ。ちょっと待って」

(待つの?あれ?「もー、わざわざいいのに」とかじゃねえの?)

「お待たせ。ホッシーさんが出発してから、コロナの騒ぎ急激に大きくなっているんだよ。入国禁止になるかもってくらい。で、どうしたらいいかすぐにわからないから、明日は来なくていいから自宅待機して。また連絡するから」

なんじゃそりゃー!?まあ、いいか。ご飯食べて、ログつけて、ファイアーエムブレムやって寝よ。まだまだ余裕だった。翌日はいろいろバタバタしたものの最後は「また来るねプーケット」と別れを告げ、なんとか飛行機に乗り込みました。うん?3人がけでオレだけ?やったぜ!!ラッキー。去年は満席だったのになあ。横になって寝よう。…この時に気づくべきでした。なぜこんなに客がいないのか。JAL便は何事もなく定刻に羽田に。そして、なんやかんやして8時頃には自宅に戻りました。やれやれ楽しかった。なんか休みになったしラッキー。まだ余裕だった。

トルルルル(職場から)

「ホッシーさん?無事に帰って来た?うん。結論からいうと、2週間の自宅待機です」

「はああああああ!?マジですか?」

「マジで。中国人の人との濃厚接触です。毎日2回検温して、なるべく外出も控えて下さい。初日から7日経つけど変化ない?」

「なんもないっす」

「暇になっちゃうね。けど、帰って来てわかったと思うけど、国のスタンスとか急激に厳しくなってて、部署のみんなも不安がってるから。そういうわけで自宅待機です。以上です」

「あ、はい…なんか、スイマセン。ご迷惑おかけします」

終了。えらいこっちゃーーーーーー!!!なんてこった。いや。仕事は回るだろう。俺がいなくても…。でも、みんなに2週間も迷惑を…なんてこと。知らなかったんだよーーー だよーーーーーーーだよーーーーー…。

それから2週間、罪の意識と母の小言にさらされることになるのでした。おわり。

――まさかのコロナエンドとは…。大変でしたね。おつかれさまでした。いつかシミランクルーズに行ってみたいんですが、どういう人におすすめとかありますか?

シミランクルーズに関しては、よほどマクロや地形に特化しているわけじゃなければ、万人受けすると思います。お値段も日程もクルーズの割にはそこそこだと思いますし、大物もでるし、魚影も濃くて種類もいるし、たぶんソフトコーラルもハードコーラルもあるし。あと、ご飯が食べやすいです。 けっこう日本人向きの味じゃないかと。

ダイバー図鑑

――なにか持っていった方がいいものはありますか?

過ごし方にもよりますが、変圧器、延長コード、マルチタップはあって困らないと思います。カメラやライトの充電も必要だし。そして、空港での時間つぶしグッズ。音楽プレイヤー、本、Kindle、Switchなんかもあるといいですね。あと、やっぱり、夜やダイビング後に風がある時は寒いから、ジッパーとかウィンドウブレーカー。男だとだいたい1日水着で過ごせちゃうけども、女子はわからないので、替えの水着を持って行って1回ごとに替えながら干しながらだと快適かもですね。

自分はスケッチログを描いているので画材も持って行きました。去年の途中から、流行りのコピックっていうのにしようと思ったらアルコールマーカーで裏うつりするので、呉竹の水彩色筆ペンセットを買ってそっちを使っています。

翻弄されながらもやめられない小笠原

――続いて、小笠原でのダイビングヒストリーを伺いたいと思います!

ダイバーとしての小笠原2回目は、あんまりドラマチックじゃないんです(笑)。はじめてのシミランクルーズに行った2018年、数ヶ月空けて小笠原に行くことにしました。8月は混んでいるし、ハートロックも行ってみたいけど真夏はイヤだし、秋になるとエイの群れが見れるらしいじゃないですか。じゃあ、狙いはそれでしょうと、かなり計画的だったんです。

ダイバー図鑑

でも、結果は「これじゃない」感いっぱいでした。というのは、この時ちょうど沖縄に台風が来ていたんです。当時まだWindyを見ていなかった自分は「沖縄じゃん、遠い遠い」と思っていたんですが…うねりってこんなに離れていても影響あるんですね!楽しみにしていたナイトダイブも中止。ポイントも島陰の係留ポイントに限られちゃったんです。「エイが見たい!外洋!」って思っていたから、ごめんなさい、長崎ワシントンの砂地&チンアナゴには、あんまり、ときめけなかった。

ダイバー図鑑

ただ、エスコートさんのボートほぼほぼ貸し切り。マンツーマンダイブ。こりゃもう、繁忙期に来るとかあり得ないわって思いましたし、この時に見たハタタテハゼは、マクロ愛、ハゼ好きへの萌芽だったかもしれないですね。

ダイバー図鑑

というわけで、2回目の小笠原は目的を達せられず、それゆえに 「まだだ!まだ終わらんよ!」 という、前回とは違う帰島への思いを固めさせたのでした。

――うーん、続きが気になる!

そして、2020年。もともとは夏休みをグレートバリアリーフに振るつもりだったんですが、そしたら小笠原まではムリだなあ…と思ってたんです。ところが、コロナのせいでオーストラリアに行けなくなった。じゃあ、エイ狙いで10月末なら小笠原行けますやん!! というわけで、早速予約。でも、常識人だから8月末くらいに上司にお伺いを立てます。

「10月末に小笠原に行きたいです。陽性者も出ていないし、渡航時にPCR検査もするので安全です」

「会食は?」

「ボッチだから大丈夫っす。船も定員を間引いているし、雑魚寝部屋やめますから」

「うーーーん。ホッシーさん、プーケット行ってやらかしてるじゃん?それにみんな帰省も自粛してるんだよ。もうちょっと考えて」

……

「もうちょい考えた結果行きます」と言う勇気が出ないうちに 「今回は諦めろ」 と会社からお達しが!考えていたのに(泣)!というわけでこの時はポシャることになります…ああ、GOTO…都民割…県またがないのに…日本一安全なのに…。

その後しばらく経って、正月休みは実家に行くかなと母に伝えると「別にいいのに」えーーー!じゃあ、小笠原行くもん!!と電話するも、繋がらない。やっと繋がったと思ったらキャンセル待ち。キャンセルねえ…ねえわたぶん…。そう思っていたら、GOTO停止!!

「小笠原海運ですけどキャンセル出ました」

なんかキタ!! この時12月22日くらい。Windyによれば父島の風と波はまだまし。でも、この状況下で行っていいのか? いや。 日本一安全じゃない?というフォロワーさんを巻き込んだグダグダの末、腹を括って、 父島にいくことを決めました。

結論からいうと、年末年始に列島を襲った爆弾低気圧の影響で海は大時化。またしても潜れるポイントが限られてしまいました。時期の違うエイの群れも、万に一つあったらいいなあって思っていた海中でのクジラとの遭遇もなし。海外はまだ無理だろうし、こりゃあまた来るしかないなあ、と思っています。ただ、父島近辺に来ていたシロワニには無事に遭遇できて、写真も動画も撮れました。

ダイバー図鑑

湾内と島陰で毎日潜れて、最終日には憧れだったポイント・ドブ磯にも行けたし、係留ポイントというか、港の中なんですが、一面の枝珊瑚で有名な製氷海岸にも潜れて嬉しかったです。 ただ…気づきました。一面の枝珊瑚。そう、究極に着底できないんです!!しかもけっこう浅い!!改めて中性浮力について考えさせられました。

滞在中もコロナの勢いはとどまるところを知らず 、もともと正月は実家に帰って小笠原は2月に行こうとしていたんですが、それだったらアウトだったなあと思いました。

――きっと小笠原に呼ばれたんですね。ところで、初心者やノンダイバーはダイビング中にサメを見たと聞くとビックリしますよね。実際に見た印象はどんな感じなんですか?

よく言われますよね。怖くない?って。怖くないですよ。見に行っているくらいだし。実際、臆病なのか歯牙にもかけていないのか、マイペースに泳いでいますよね、やつら。シロワニだけでなく、ハンマーもだけど。逆に、人も襲うことがあるホホジロザメをわざわざケージに入って見るっていうアクティビティがメキシコかどっかにありますけど、あれはやりたくないですね(笑)。

――パニック映画にあるやつですね。あれとは別物ですよね。あと、製氷海岸ではどんなことを気をつけましたか?

製氷海岸はマジで難しいっす。進むと深度がでるから距離を取れるけど、サンゴの中も見てみたいし…そもそも、係留ポイントが水深4mくらいしかないんですよ。だから、講習で水深3mでの中性浮力とかガチで会得していないと、なかなか余裕を持って距離を取れないです。ホバリングするわけじゃないから、擦るくらいの感覚のところでキックしていれば大丈夫なんですけど。スナッピーコイルで下げているカメラと、ホルダーについているオクトパスが落っこちて引っ掛からないか気になりましたね。

最初は興味がなかったマクロ。そして、水中写真への興味

――小笠原のハタタテハゼのお話が出てきましたが、そこでマクロの世界に目覚めたんですか?

ソコソコちっちゃい生き物で「かわええ」って思ったのはハタタテハゼさんが初めてだったかも。あの子たちって、色も背ヒレもすごく特徴が分かりやすいじゃないですか。それでかもですね。

ただ、マクロに関しては繰り返し行っている伊豆で、「見つけられない!!どんな目なん?くやしーーー。きーーー。オレも見つけたい。見つけてチリンチリンしたい」って思いながら潜っているうちに、少しずつ見つけられるようになったり、写真に撮って後から見て「かわええ」って思ったり。

ダイバー図鑑

その繰り返しで徐々に目覚めてきた感じですね。スケッチログで描いて自分で「かわええ」って思ったり。

ダイバー図鑑

今でもハゼ系の方が好きです。くりくりしていたり、ボケーーっとしていたりして表情もかわいいですよね。

ダイバー図鑑

――なるほど。たしかにマクロには見つける喜びがありますし、じっくり見てかわいいなあと愛でる楽しさがありますもんね。スケッチだけでなく写真も撮られるとのことですが、水中写真の師匠はいらっしゃるんですか?

写真はいないですねー。はじめての小笠原のために買ったFUJIのFinePix120がアカンわ…ってなって。けど、ハウジングっていうのも本体もたっかいなあーと。そんな時にソフマップから 「お客様、ノートPC買った時のポイントの期限もうすぐっすよ!!」 っていうハガキが来たんですね。それで通販サイトで中古カメラ見ていたら、ニコンのミラーレスが安く出ていた。お、これなら球場とかでも望遠とかできちゃう?と思いつつ、ハウジングを探したら通常7万円くらいのが並行輸入だと2万円で売っている!じゃあ、これにしよ。ポチ。という経緯で、OLYMPUSが圧倒的シェアとか知らずにポチっちゃったんです。器材が違う上に上位っぽいもの持っているから、みんな、すげーーーとは言うけど、凝った使い方は教えてもらえなかった…。

ある時、荒巻さんが 「え?オートでやってるんですか?シャッタースピード優先でISOこんくらいでカスタム設定できるなら、してみたらどうです?次に行く時に試しません?」って言ってくれたんですけど、なんとなく、棚上げになり…。そんなことをしているうちに、ハウジングが水没!!直そうと思ったら、まさかの4万5千円のお見積り…。いいです…そんならTGにしよ。万が一のことがあってもボディは平気だし。となって、今に至ります。

器材も同じになったので、荒巻さんか、ブランニューシーのゲストでけっこう凝ってる人がいるから、今度は聞いてみようと思います。

――また沼フラグが立っちゃいましたね…(笑)。

師匠のOKをもらい、上級者向けの神子元に挑むが…

――それでは、印象的な海について、締めは神子元でお願いします!

神子元は荒巻さんのショップのウェブサイトでも紹介されていたし、ブランニューシーでも「上級者向け」と書いてあって。この時点でそそられますよね。条件をつけられちゃうっていう。50本だったかな、本数制限もあるし。それに、マクロメインの伊豆でハンマーヘッドシャーク!!しかも、世界的に珍しいくらいの勢いらしいじゃないですか!?そんなに見られるの!!これだけで目標としては十分でしたね(笑)。

で、リゾートで本数を稼ぎつつ、伊豆に繰り返し通っていたある時、荒巻さんから 「スキル的には大丈夫だから、都合のいい時に今度行きましょう」と言ってもらえ、連れて行ってもらうことになりました。

初めていった神子元は…みどりだった…。その後、10回くらい行きましたかねぇ。地図見るとわかるんですが、伊豆大島よりも外海なんですよね。なので、潮当たりきつすぎて、海中の景色はでかい岩ばっかりでサンゴとかないです。よく言えば男らしく、悪く言えば、景色自体は単調。驚くほどきれいな時と、西湘かよ!!というくらい濁ってる時と差が激しいし、1日の中でもこんなに変わるか!!というくらい変わります。同じ神子元島のポイントでも、場所によって何もいないところもあれば、イサキやタカベが雲や壁みたいになっている場所もある。

ダイバー図鑑

そして、問題のハンマーなんですが…疲れる(笑)!!オレにはまったくわからない段階で、荒巻さんはもう見つけてダッシュを始めるんですね。それを何秒がやって距離をつめると「ああ、ホントだ、いたいた」という感じ。しかし、これでは被写体としては遠すぎて「ぼんやりハンマー」の写真にしかなりません。というわけで、よくTLとかで見るハンマーリバーの写真や接写ってまだ撮れていないんですよ。

ダイバー図鑑

1回、超近いことがあったんだけど、あまりのことに興奮しすぎて、シャッターと間違えて電源ボタン押しまくっていて写真に残っていない…。

――電源ボタン!?それは痛恨の極みですね(泣)。

だから、行った回数のわりにはあんまり写真がないんですよね。魚種もあんまりないから、スケッチログとの相性は最悪です(笑)。ハンマー出ない、他の魚もいない、みたいなときは特に。 最初はとにかくハンマー見たい!だったけど、上記の通りストライクゾーンの狭いポイントだし、遠くて高い!! なので、今後行きまくるということはないかなぁ~。でも、アルミタンクでドリフトということもあって、回数を重ねて残圧や疲労度にスキルが反映される手応えがあるし、ドリフトでばーって流される楽しみもあるので、シーズンに1〜2回は行きたいですね。

「なせば大抵なんとかなる」の精神で。まだまだ夢は広がる

――いろんな海のエピソードを伺ってきましたが、もし理想の年間スケジュールを立てるとしたら、いつどこで何を見ますか?

とりあえず2年周期で、今年からでコロナの問題をなしにしたとして。

  • 月1回は伊豆に行く
  • 5〜6月くらいに神子元
  • 7月に伊豆大島
  • 9月か10月に小笠原
  • 翌年の6〜8月にグレートバリアリーフ

あと、どっかで串本行きたいですね。前回は台風の影響で外洋に出られなかったし、定期的に行きたいですよね。日本人として。石垣、久米島、西表も行きたいけど、ダイビングだけじゃないので様子を見てですね。グレートバリアリーフは去年行こうとしてコロナでつぶれて、今年の10月まで航空券のバウチャーがあるけど、まあ、延びるじゃろと期待しています。例によって英語はできないけど「なせば大抵なんとかなる」で。

――伊豆大島は何を狙っているんですか?

伊豆大島は大物はハンマーですけど、秋の浜ってポイントでマクロがいつもいろいろいるんです。ここもショップさんは「うみのわ」さんってところで、年イチペースなんですがリピートしています。NAUIのショップと民宿が合体していて、インストラクターの高山さんが作ってくれる男飯がこれでもかってくらいボリュームあります。

――いいですね。あと、関東の方で串本を挙げられるのはちょっと意外でした!

そうですね。串本は関西の方の伊豆半島みたいな場所ですよね。そもそも串本に関しては「旅行で行ってみたかったところがダイビングポイントとしても有名だった」って順序なんです。大学卒業時にトルコに旅行して、それで、エルトゥールル号事件を知りました。いつか行ってみたいなぁ~。と思っていて、ダイビングを始める前に一度、串本に行くことができた。

その後、有名なダイビングポイントだと知って、これはまた行かねばと。池袋から新宮まで高速バスが出ていて、仕事明けに出発、早朝に戻って出勤できるので。ただ、前回は台風の影響で外洋に行けなかったり、黒潮の大蛇行で本来の透明度ではなかったと、本州最南端っていう立地ゆえの見どころが満足に見られなくて。それに宿泊先だった串本倶楽部さんのご飯、異次元においしかったし、また行きたいなと。ダイビングというより旅行ですね(笑)。

――エルトゥールル号遭難事件!なるほど。串本はトルコの姉妹都市ですもんね。向こうでも有名なんですね。さて、それでは今後やってみたいことについて聞かせてください!

やってみたいことは…コロナの影響で中断してしまっているんですが、ホントはマスタースクーバをちゃんと取ってバディ潜水できるようになりたいですね。そのために、海中でのナビゲーションができるようにならないと(笑)。マンガ「あまんちゅ」を読んでいて、ある時「この子たちバディ潜水してる!?」と気づいて、ビックリでした。Cカードは自分の方が上位だけど、スキルはてことぴかりの方が上なんです(笑)。フロートももう2年くらいいじっていないから、機会があったら学びなおさないとです。そもそもバディ潜水したいのは、グレートバリアリーフはバディ潜水だって聞いたから。いろんなところに行けるように持っていたいスキルですね。

それから生き物は小笠原のエイと海中でのクジラは会いたいな。Twitterで八丈島でお世話になったショップさんがクジラに遭遇したり、写真家の方が母島でザトウクジラに会ったりしたのを見たんです。小笠原だと、アオミノウミウシも見たいですね。八丈島の方がいいのかなぁ~。伊豆だったら、大瀬崎にあらわれる変な深海魚を見られたら嬉しいですけど、それよりも、クダゴンベとかコケギンポとかフウライウオとかカエルアンコウとかを自力で見つけて、チリンチリンしたいですね(笑)。

広く浅く、ビーチもボートも、たまにドリフトも…って、とにかく楽しく遊びたいです。あと、カメラのカスタム設定もちゃんとやろう(笑)。

――こんなにいろんな海に行っても、まだまだやりたいことは尽きませんね!それでは、とうとう最後になりましたが、ダイビングを始めるか迷っている方や続けられるか不安な初心者ダイバーにメッセージをお願いします!

そうですねぇ~~~。いろんなアクティビティがある中で、ぶっちぎりに初期投資がかかっちゃうし、1回あたりも安くないですよね。ダイビング。スキーでも10万あればひととおり揃えられて、1回あたりも6000円くらいかな。リフト代なら。だから、軽々しく言えないんですけど。

海の中って「宇宙」だと思うんです。浮遊感もそうだし、陸上とはまったく違う生き物もそうだし、高くて重い装備がないと死んじゃうところも。そんな「宇宙」がけっこう近くで待ってるんで、興味があったらやってみて欲しいですね。体験ダイビングはできれば見栄えのいいリゾートのポイントで(笑)。

ぺーバードライバーになっちゃっているダイバーさんは、案外と体は覚えてるもんだと思うんで、あんまり心配せずにリフレッシュダイブして、旅行感覚で沼にはまってくれたら楽しいと思います。Twitterいいですよね。「こんな状況で不安です」「こんな情報欲しいです」って言うと、たぶん、なんかのリプが来ると思うんで。活用して、楽しい情報ゲットして、楽しんで欲しいです。

――ありがとうございました!

最悪の出会いから一転、どっぷりと海の世界に恋してしまったホッシーパパさん。海でしか見られない生き物や師匠たち、いろんな出会いを通して海に引き込まれていく様子をそばで見ているような臨場感たっぷりに語ってくださいました。お話が楽しすぎて、記事にするうえでほぼ削れませんでした(笑)。ダイバーは海のことになると本当に話が尽きないですよね。落ち着いたらまた国内外の海を旅してツイートしてくださいね!

お話に出てきたダイビングショップリスト