ダイバーの正体に迫る本企画、27人目はAKARIさんです。よろしくお願いします!
AKARIさんプロフィール
OWSI。経験本数は8500本。サイパン在住のインストラクター。Xでは初心者ダイバーあるあるな悩みに対して、目からウロコな解決方法などをつぶやき中。
リゾート迷子ダイバーまっしぐら…からのサイパンでインストラクターに!
――まず、ダイビングを始めたきっかけについて教えてください。
大学年2生の夏、友だち6人で沖縄に行くことになったんです。部活は吹奏楽部、体育の成績はいつも2〜3、しかしながら夏のプールの成績だけは5だった私には、ダイビングを始めるための特別な理由は必要ありませんでした。そこで、オープンウォーターの講習を受けることにしたんです。
でも、Cカード(ライセンス)取得後はファンダイビングに行くこともなく、ときどき海外に行っては友だちの体験ダイビングに付き合うくらいのリゾート迷子ダイバーになってしまいました。
――いったい何があったのですか?
とにかく嫌なインストラクターにあたっちゃったんですよ。ダイビング自体は楽しかったけど、「ダイビング業界って…(自粛)」と思いました。
――ええっ!?詳しく聞いてもいいですか?
確か20人くらい生徒がいたのですが、最初に「どこの団体でCカードを取りたいか?」と聞かれました。 私たちは前提知識がなかったので「なんでもいい」と言ったのですが、1人だけ特定の指導団体を口にした女の子がいて。
すると、 インストラクターが「それでもいいけど、そうするとこの中の半分以上が落ちますね」と返し、その女の子は引っ込まざるを得なく… おそらく、その担当インストラクターの指導団体が違うところだったんでしょう。今思えば、 「そんなことあるかーーーい!!」と思いますが当時は知る由もなく(笑)。
――うーん、それなら最初から聞かないでほしいですね。
それから、プール講習で怖くてマスク脱着ができなかった友だちに対して、水中スレートで 「なめてんの?」 って書いたり。
マウスピースを全員購入しなければならない謎ルールがあったり。マウスピース購入したのに、友だちがメイクしてショップに行ったら器材が汚れるからとお店の中に入れてもらえなかったり。学科試験に落ちたら追試が有料だったり。
器材セッティングテストでバルブを全開した後の半回転戻すのを忘れていたら 「お前、死にてーのか!」 と頭をこづかれたり。あれは、ぶつかった時にバルブが壊れないようにするためなので忘れたって死なないんですよね。
最初に潜った時も感慨深さとかはなく、インストラクターが「中性浮力でピタッと止まって見せます」って言っていたけど、もちろん海は多少ウネリはあるからゆらゆらしていて、「全然止まってないけど…?」という印象だけです(遠い目)。
そんなことがたくさんあった最終日。 「追加でファンダイビングいかがですか〜?」って(笑)。「行く行…行くかーーーい!」って壮大なノリツッコミですよ(笑)。
結局、あの時の6人の中でダイビングを続けたのは私だけです。
――そりゃ、そうなりますよね。
当時は掃いて捨てるほどお客さんがいたんでしょうね。3桁ローンを組まされてないだけマシかもです。当時の時代背景(笑)。
元々ダイビングに対する強いモチベーションがあったわけでもなく、「息継ぎしなくていいなんてどんな感じだろー」くらいのイメージしかなかったので、晴れてリゾート迷子ダイバーの仲間入りです。
でも、24歳くらいでサイパンに来て、初めてのファンダイビングで2本潜っただけで「あ、インストラクターになろう」と思ったんです。行き当たりばったり人生。
――展開が予測不可能(笑)!サイパンに行き着くまでに、Cカード取った後はたまに体験ダイビングジプシーはしていたんですよね?
そうです。バリ数回、フィリピン数回、どこに行っても「上手だねー」と褒められていましたね。でも、どこもクオリティが変わらなくて。
Cカード取得後はじめてのバリでは、体験ダイバーの友達が浮上の時にBCにぷーって空気を入れられて浮上していきました。私は知っていたから自分で上がりましたけど。
――こういった経験の積み重ねが「初心者のかゆいところがわかるAKARIさん」を産んだかと思うと複雑な気持ちですが…その状況でダイビングを続けられたのはすごいですね。
ダイビング自体は楽しかったんだと思います。 でも、Cカードは取ったものの、その後どうしたらいいのかが本当によくわかりませんでした。「…(自粛)なショップ」に当たってばかりだったので、日本で都市型ショップを訪ねようという気にもならず。
――そんな心境であったにもかかわらず、サイパンで人生の転機を迎えたんですよね。
Cカード取得から5年くらいだった頃でした。リゾート施設系の業界で仕事していたのですが、社員旅行でサイパンへ行くことになったんです。それで、自由時間に自分1人でダイビングを申し込みました。「あ、そういえば私、Cカードあったなぁ」って。
で、そのショップがはじめて普通だったんです。至って普通。
――今までが酷すぎて、ようやく普通のショップに出会えたと(泣)。
そうそう。
――サイパンの印象はいかがでしたか?
まず、海の前に、日本とサイパンの近さに驚きました。たった3時間半なんですよ。それこそ東京-大阪を新幹線で移動するくらいの時間です。
それまで行っていたバリは7時間以上、フィリピンでも5時間近くかかるので、実家に帰るくらいの感覚で海外に行けるのはびっくりでしたね。
そして、ダイビングポイントまでの近さにも驚きました。ボートに乗って5分で着くポイントもあったり。ラウラウビーチ、オブジャン、グロットの3箇所全てサイパン中心街から30分で着きますしね。
――バリだと、だいぶ長い時間ボートに揺られますもんね。船酔いダイバーさんには、この近さは魅力ですね!
そう。無理せずに済む実家のような場所。それがサイパンなんです。
そして、海は穏やかでキレイで、チョウチョウウオが大きくて!いつのまにか「よし、今の仕事は辞めよう。サイパンでインストラクターになろう」と気持ちが固まっていました。
――ようやく心の底からダイビングが楽しいと思えた時に、「ファンダイビングいっぱいしよう!」ではなく「インストラクターになろう!」だった理由は何だったのでしょう?
若さですよー(笑)。合理的でしたしね。サイパンでAOW取得から始めて、ほどなく現地に住んでいた外国籍の夫と付き合い始めたんです。それで、「サイパンに住むためにビザを取得しやすいインストラクターになりたい」というのもありました。まさか結婚するなんて思ってもみなかったですけど(笑)。
あと、20世紀末に世界が滅びるって言われていたじゃないですか。もちろん本気で信じていたわけではないけど、21世紀になったのは「儲けもん」というか、「やりたいことをやらないと損だな」と思っていたんですよね。同時多発テロとかもあった頃で、とにかく「いつかやりたい」はダメだなって。
――いろんな物事がAKARIさんを突き動かしたんですね。サイパンに呼ばれていたって感じがします。
そうなんです。サイパンに来る人は前世で縁があったと思っていて、私自身も前世サイパンにいたんだと思っています。住んでいる人も、遊びに来る人もきっとなんか縁があったんだろうなーって。
――ああ、なるほど。だからサイパンが好きな方は「実家に帰って来た!」と感じるのかもしれないですね。
そうそう。ホッとするんですよ。これでいいんだ、ここにいていいんだ、って。
――サイパンに渡って、AOW取得からインストラクターになるまではスムーズに進みましたか?
そうですね。最初にファンダイビングしたお店でAOWからダイブマスターまで3ヶ月トレーニングして、ビザが切れる帰国ギリギリのタイミングに偶然インストラクター試験があったので、「今回受けちゃえ」と急遽受けることにしました。
で、当時まだインターネットもそれほど普及していなかったから帰国前に就職を決めたくて。まだインストラクター試験に受かってもいないうちから、みんなが集まるラウラウビーチで手当たり次第「雇ってください〜」って声をかけていました(笑)。
生徒目線でお答えすると、やはりダイブマスターからはプロレベルとなり、境界線があるように感じます。ダイビングのBlack cardですからね!
特に私は「すぐに実務に就く」「ただのインストラクターではなく、サイパンガイドになる」という目標があったので、ずっとスキルトレーニングしていました。アシスト訓練をしたり、午前中のダイビングの全員分の残タンクを使って毎日プールで個人練習したり。ホテルのプールだったので1.5mしか深度がない中、水面からも出ず、水底にもつかない中性浮力を体育座り状態でキープし続ける練習は難しかったのを覚えています。
――なるほど、個人練習も積み重ねつつ、ラウラウビーチでの就活まで!情熱がすごいです。苦労はありませんでしたか?
苦労はないですね。楽しかったです!ラウラウビーチで私を拾ってくれたのが、今はなき前ショップの社長で、とても尊敬できる方だったので。
「どこで潜るかより、誰と潜るか」自社ボートがなくても、店舗がなくても選ばれるガイドに
――サイパンで働きはじめてみて、どうでしたか?
まず、ダイブ本数の多さとお客さんの多さは予想外でしたね。
トレーニングしていたお店は1日2ダイブが基本だったのですが、初めて働いたお店は1日3本は当たり前。しかも、朝の集合時間も早いし、夜も日が暮れるまで仕事とハードでした。
というのも、その頃は成田や大阪からジャンボが3便デイリーで就航していたり、名古屋もグアムと三角飛びしたりしていたので、日本各地からダイバーが来ていたんです。
当時働いていたお店は旅行会社と提携している大型ショップで、最初の1〜2年はダイバー製造工場のようにOW講習を6人ずつ、ひたすら担当しました。あのお店での12年間でずいぶん引き出しが増えましたね。
――今のAKARIさんのスタイルとは異なりますが、抵抗感はなかったですか?
経営者ではなかったし若かったので、その方針にもついていけました。お客さんも当時は若かったし。
インストラクターも1番多くて12人もいたので、自然と自分の担当みたいなゲストが増えたのもやりやすかったですね。私を拾ってくれたボスが人間性を押し出して集客する方針だったのが合っていたなあと。あれから20年のお付き合いになるダイバーさんもいます。
そのお店を辞めて独立した時に、SAKURAマリンに来られるようになった方に言われたのが 「どこで潜るかより誰と潜るかだよ」という言葉なんです。前のお店は店舗も自社ボートもあったけど、店舗もダイビングボートもない私たちについてきてくれたゲストも多かった。
なるほど、この言葉を大切にしなきゃなと思った瞬間でした。
――ガイド冥利に尽きますね。世の中にはフォト派など、さまざまな価値観がありますが、「人派」というのもいいですね。どういったゲストさんが多いですか?
私が「こういうのやってみよう」「ああいうの面白いかも」と言うと、一緒に面白がって全乗っかりしてくれる方かなあ。
水中トリック写真とか、勝手にプロモーションビデオとか、ああいうのは私の思いつきから始まるんですよ(笑)。予約いただいた段階で「どこでもいいよー」という場合は、「この日は、こんなことやってみよう」って決めて、ガイドは相方に任せつつ私も企画部隊として参加します。もちろん、ゲストから何かリクエストがあったら、全力投球で実現に向けて尽力します。
そういうスタイルを良しとしてくれる相方と、面白がってくれるリピーターさんあっての私ですね。アイデアを思いつくのは私の持ち味だとしても、実現できるのは周りに恵まれているからなんです。一緒に働いて来た人たちがみんな私とは違う素晴らしい面がたくさんあったので成り立ってきたと思います。
今一緒に働いているガイドは、180度キャラや趣味が違う。私が苦手とすることはほぼ全て相方ガイドが苦も無くやってくれるし、逆もしかり。
――それは心強いですね!
そうなんです。たとえば、SAKURAマリンにはゲストのデータベースがあるんですが、相方がすべて記録を残してくれています。どんなウエットを着ていて、ウエイト何キロだったとか、耳抜き注意とか、船酔い注意とか、次回は何本目に記念ダイビングだとか、こんな話していたとか、結構細かく残ってます。これは相方ガイドの細やかなサービスの賜物です。
記念ダイビングがある時には、相方ガイドが布を縫ってくれて。布の大きさはまちまちなので、記念ランチョンマットの時もあれば記念ハンカチの時もあります(笑)。で、布に描くのは私の仕事です。2人の合作なんですよ。
――陸でも最高のバディなんですね。ところで、そうしたアイデアはどういった時に思い浮かぶものなんですか?
ずーっと考えていると思います。「生きている全て×ダイビング」できっともっと面白い感動を作ることができると思っているので。海にいても、陸にいても、常にネタ探しの日々です。
たぶん私はいわゆるガチ勢にはなれないから、なれなかったからこそ、それ以外の人たちと海を楽しみたいのかもしれませんね。サイパンにもガチ勢なガイドさんもいるので、ガチ勢の方たちは本職の方に任せます。
今はコロナ禍を経ていろんなプロジェクトをやり他のショップのガイドさんたちとのつながりも深まったので、連携も取りやすくなりました。それぞれのお店のカラーがあるから、どんなゲストもきっと楽しめる海がサイパンにはあると思っています。
――常に面白い感動を探し続けているからこそ「AKARIさんと潜りたい」と思うダイバーが後をたたないのかもしれませんね。
戦慄!穏やかなサイパンの海で、忘れられない衝撃ダイビング
――印象に残っているダイビングについて聞かせてください。
いくつかあるんですが、まずは「トローリングの釣り糸」です。
ディンプルというカスミチョウチョウウオが集まることで有名なポイントでのこと。いつものようにゲストを連れて固定の潜降ロープで降りていたら、トローリングの糸がロープに絡まっていたんです。めちゃくちゃに絡まっていた感じではなくて、引っかかってながーく遠くまでたなびいていた感じ。サイパンの透明度で先が見えないくらいだから、相当長かったんだと思います。 なので、降りながら自分の手に巻き付けて回収を始めたんです。
すると程なくして、ビンッといきなりテンションがかかった、と思ったら巻きつけた糸がぎゅーーーっと私の手を締め付け始めたではありませんか。
――えええ…!(困惑)
素手だったので急いで取ろうとするんですが、糸の締め付けの方が早く、最後の最後、指だけが抜けなくて。中指の第一関節。だんだんめり込んでいく糸。「あ、これ指が切断される」と思った瞬間、どうにか取れて、先を見るとイソマグロが泳いでいるのが見えました。
と同時に、悔しさと面白さが私の中で大噴火。絶対釣り上げてやる!!と再び釣り糸を追いかけて掴んだのですが、ビビって手には巻けず、指示棒に巻き付けるも、するする抜けちゃうし、結局取り逃しました。
しかし、我に返って考えてみると、もし腕に巻き付け始めてたら…マジでゲストにトラウマを与えるダイビングになりかねない出来事でした。あのまま長い釣り糸と大海原を旅することになったイソマグロに対して「気の毒だな」という気持ちと、「もうちょっと冷静だったら釣り上げて面白かっただろうな」という感情と、目の前で指に食い込んで行くシーンの恐怖といろんな感情で大混乱ですね。
――「やっぱり釣ろうとしたんだ(笑)」という面白さと恐怖とで、私も大混乱です!すぐゲストに伝えましたか?
たぶん伝えたと思います(笑)。めり込んだ後の指も見せびらかして、「痛い痛い」と大はしゃぎしたと思いますね。
――楽しんでますね(笑)。もし次に同じ場面に遭遇したらどうしますか?
まず、カラビナみたいなスルッと抜けないアイテムにとりあえず巻き付ける。次に潜降ロープにそれを巻き付ける。そこからは持久戦。相手が弱るまで待ちながら、チャンスをうかがう。こんなシミュレーションをしています(笑)。
――もしかしたら、いつかAKARIさんのリベンジマッチを見られるかもしれないですね!
続いての衝撃的エピソードは、戦跡ポイントで潜った後にボート上でゲストのBCDが燃え出したことです。
――え…!?燃え…!?
テニアンにダンプコーヴというポイントがあって、ここは戦争後にいらなくなったものがたくさん捨てられているんですね。戦車やタイヤ、弾丸もたくさん落ちている。こういったものは空気に触れると発火する場合があるので、何ひとつ持ち帰ってはいけないルールなんです。
また、ここは断崖絶壁の下のポイントなので、釣りをする人が多くて、浅場の珊瑚にはたくさん釣り糸が引っかかっているんですね。それで、ダイビングのついでにサンゴから釣り糸を取って回収していたのです。
ある日、私はアメリカ軍の方、相方は日本人ゲストのガイドのために同じボートに乗っていました。その日のダイビングを終えたので、とりあえず器材をはずして使用済みタンクを横に寄せて、サイパンに帰ろうかとしたその瞬間。
「なんか煙が出ている!!!」というゲストの声に振り返ると、先程はずした器材から煙が。その直後、モクモクモクモク、シューーーーーッと化学反応的な炎!キャプテンが手当たり次第、器材を全て海に投げ入れて。消火器をかけて。とりあえず、ボートは無事でした。
しばらくして、再び投げ捨てた器材を回収に戻りました。私が器材を背負い水中へ。とりあえず、発火源ではなさそうなものを回収。ボートへ。そして、発火源とみられるBCDを持って水面に上がって引き上げようとすると、なんと再び燃え上がる。また水中へ。ポケットの中を見るとオレンジ色の物体。すると、私が連れていたアメリカ軍の方の1人が、なんと爆弾処理のスペシャリストで!「それはphosphorus(リン)だ」と。リンが釣り糸に付着していたのです。
「とにかく煙を吸うな、素手で触るな。最悪死ぬぞ」と言われながら、できるだけリンを海に捨てて、引き上げました。ボート上ではコンテナの中に海水を満たして、リンがついたと思われるものを浸けたままサイパンへ。リンは水中にあると安定しているのです。
サイパン島に帰って港でその器材を再び海水につけて金ブラシとサンドペーパーで掃除して、なんとか煙が出なくなるまでやろうと思ったのですが、4時間以上作業してもずっと煙は出続けて。仕方がないので、どうしても取れない発火源のBCDを海水入りのバケツにつけたまま持ち帰りました。
完全にリンが反応し切って燃えなくなるまで、まさかの1ヶ月かかりました。それ以来、釣り糸であってもそのポイントからは持ち出さないことに決めました。
たまたま釣り糸にリンがついてしまって、たまたま持ち出してしまった事故。たまたま機敏なキャプテンだったから全焼を免れ、たまたまゲストに爆弾処理スペシャリストがいたから、対処法がわかって。こんなたまたまあります?今書いていてもまたドキドキです。
――いやーーー恐怖体験!火事にならなくて本当によかったです。釣り糸でさえダメなんですね…!
そして、3つ目のエピソードは、サラッと。
スポットライトというポイント。ここも断崖絶壁の下なんですが、釣り人も多くて。メインのケーヴじゃないところに入って出ようとしたら、入り口の上部にユーラユーラ…と釣竿が。
脳裏に浮かんだのは、その釣り竿の先に釣り人がゆらゆらしているシーン。そうなれば確実にゲストにはトラウマになりそうだったので、1人で勇気を出して見に行ったら、釣竿だけでした。あれはちょっとだけゾッとしました。
――釣り人が落下していた可能性ありますもんね(恐怖)。穏やかなだけかと思ったら、サイパンの海はいろんな意味で飽きることがなさそうです。
ナイナイ!飽きないです!
SAKURAマリンのダイビングってどういう感じ?
――ゲストさんの記念ダイビングで人文字をやっているというブログ記事を見かけたんですが、詳しく伺ってもいいですか?
人文字もやりますね!え?みんなやらないんでしたっけ(笑)?あ、もちろんやりたい方だけですよ!
――いやあ、あんなガチなのはあまり見ないような(笑)。あれってぶっつけ本番なんですか?
陸練する時もありますね。
基本は任せた数字をご自身で表現してもらう形が多いかな。時々テクいことしてくるゲストもいるので、驚きもあって楽しいです!あと、経験本数に応じてお任せする数字を変えますね。「1」はビギナーさんへ、というように。
――私は「1」の係に任命される未来が見えます(笑)。
美しい「1」を期待しています!
――全くの新規ゲストでも記念ダイビングや人文字はお願いできるものなのでしょうか?常連さんが一緒の日でも?
もちろん新規ゲストでもお祝いしたいです!たぶん、うちのリピーターさんが率先してお祝いしていそう。新規ゲストがいると、なぜか私たちより楽しませようとはりきってくれるリピーターさんが多いんです。ありがたやーーー!
――そういうのもSAKURAマリンさんの良さですよね。どのゲストさんも優しそう!
きっと、みんな人見知りだからだと思います。 何を隠そう私が1番人見知りの緊張しいです(笑)。
――みなさん他の人の気持ちがわかるダイバーさんなんでしょうね。
そういうところが、やっぱり実家っぽいですね。
――AKARIさん自身はどんなダイビングが好きなんですか?
潜水範囲4畳半のマクロダイビングですね!
私、実はサイパンNo.1の方向音痴ガイドなんです。 昔は3位だったのですが、上の2人が引退されちゃったので1位にのぼりつめました。だから、たぶんサイパンガイドの中で1番行動範囲が狭い。あまり泳がない。すると、必然的に小さなものに目がいくわけです。
あと、もうひとつ。私はお客さんの残圧を聞くという行為をしません。常に残圧計を目で見ていたい。自分の目で見えないくらいの距離にいて欲しくないというか、そういう距離にならないようにするというルールを自分に作っています。なので、ぐんぐん泳いで行くことができない。もちろんコンパスは使えますが、とにかく心配症なので完全にわかる範囲しか動きたくないのです。
とまあ、いろんな理由で動かないから結局小さいものが好きになったと思っています。
ワイドは相方ガイドが素晴らしい方向感覚でご案内するから、私はいいやーって思っています(笑)。
――ここでも相方さんとの相性バッチリなんですね!けど、残圧計見えるんですか!
残圧計、見えますよ!見える範囲に自分がいればいいだけです。
もちろん、最初のブリーフィングで「残圧は聞きませんので、見えるように画面を表にしておいてね」と伝えます。「見えない人だけ目が合った時に聞くよ」とも言います。ガイドが残圧を聞いてくれないと、知らないと思って不安になる方もいるかなと思って。
慣れてくると通りすがりのダイバーの残圧計も見ちゃう。んで、「あーあ」と思うこともある。サイパンはアルミタンクなので、ダイビング後半のタンクの浮き上がり方でも残圧の見当がつきますね。あ、あと関係ないけど、陸上ではタンクを地面にぶつけた音の高さでだいたいの残圧がわかります。これ得意技かも(笑)。
――音で!小ネタどんどん出てきますね(笑)。「目の届くところにいる」と固く心に決めているインストラクターさんが一緒に潜ってくれるのは、ビギナーやブランクダイバーにとっては安心です。残圧を答えるプレッシャーもないし。
――ちなみに、4畳半の範囲でずーっと2〜3の生き物ターゲットでネチネチ写真を撮る夫と、図鑑コンプ目指してできるだけたくさんの種類の記録写真を撮りたい私…とかでも、ご対応可能なものでしょうか?
ありあり!大丈夫!どこかの根を拠点にして、写真を撮っている旦那さんの周りを回っていけばいいんだもん!
――早くサイパン行きたいです(泣)。夫も私も本当は1ヶ所にじっくり留まりたくて。でも、「生き物いっぱい見てもらおう」と案内してくださるガイドさんに水を差すのもなぁと。セルフじゃなくても本当の好みのダイビングができるのは、大きな魅力ですね!
美容師さんの気分かもですね。事前にいろいろ聞いたりして、一緒に作り上げるみたいなイメージかなー。
――AKARIさん本人も面白がってくれるだろうから、みんなハッピーですよね!
こないだ相方ガイドに便乗して撮影ダイビングに行ってきたんですが、相方ガイドも終始「楽しい、楽しい」言うてました(笑)。SAKURAマリンは、ガイド2人とも率先して楽しんでますね!
――素敵です!あと、サイパンといえば、ガイドさん同士が仲良しと聞いたことがあります。
そうですね。新規でビザを取るハードルが高いので、サイパン歴の長いガイドばっかりなんですよ。
他のお店のリピーターさんもお顔がわかる方も多くて、乗り合いボートでも盛り上がったり。お店同士でゲストを取り合うみたいなことがあんまりないんですよね。他のお店のリピーターさんは、きっとうちでは楽しくないんだと思ってます。みなさん適材適所というか。
たった3時間で着く穏やかで美しいサイパンを、ブランクダイバーの聖地にしたい!
――今後やってみたいこと、やっていきたいことについて教えてください。
リゾート迷子ダイバーだったかつての私がサイパンの海でダイビングにハマったように、サイパンを「ブランクダイバーさんの聖地」にしたいと思っています!
――ブランクダイバーっていろんな意味で敬遠されがちだと思っているのですが、なぜブランクダイバーなのでしょう?
その問いにも現れている業界の誤解を解きたいのですよ!これはまさにダイバーさん目線。私も迷子ダイバーの頃はこう思っていました。「こんな素人が行って迷惑なんじゃない?」って。
でも、プロ側目線になるとわかるんですが、1ミクロンも迷惑ではないんです。全く敬遠もしてもいない。ほとんどのインストラクターは、久しぶりにダイビングに出かけてきた勇気を褒め称えるし、海での楽しい思い出作りに立ち会えたことを嬉しく感じると思います。ここに喜びを感じる人間が、この仕事をやっているんです。
この年になってわかるのは、人生のいろんな節目を経てダイビングから遠ざかってしまう瞬間があるということ。結婚、子育て、転職、病気、怪我、介護など。だけど、「やっぱりやりたいな」とか「好きだな」って思うのであれば、その手助けをしたいと考えています。
そして、サイパンの海は年中温かく透明で穏やかで、日本からたった3時間で来れちゃうので、「ブランクダイバーの復帰に、こんなにうってつけのロケーションはない!」とアピールしたいのです。
――久々に行くと責められそうな恐怖や、他のゲストさんの迷惑になる心配があるのですが、「勇気を称える」なんて、すごく嬉しいです。リフレッシュダイビングはどんなポイントに行けるのでしょう?リフレッシュダイビングとかチェックダイビングって、「1本無駄にする」感覚があって。
そうか、ずっとスキル練習して海を楽しめないイメージがあるのか!
サイパンはまったり潜れる場所が多いのですが、「せっかく潜ったのに見どころが何もない」というポイントがそもそもないんですよね。
リフレッシュダイビングでよく行くのは、有名ポイントのラウラウビーチです。みんな大好きラウラウビーチ。体験ダイビングから講習、ファンダイビングも楽しめちゃうパーフェクトビーチです。でも、ボートがご希望ならボートでも大丈夫。
とにかく、リフレッシュダイビングは、エントリー前の不安を最大限に払拭し、寄り添って再びダイビングの世界へご案内することだと思っているので、きっと無駄にはならないと思います。
――それは嬉しいです!リフレッシュダイビングは、どういった流れで進むのですか?
1本目をリフレッシュダイビング、2本目からは普通にファンダイビングされる方がほとんどですね。リフレッシュビーチコースの場合は、うちではポイントを変えないので、みなさんすぐ慣れます。
ブランクも不安も人それぞれなので、その人のペースに合わせて行います。翌日はボートダイビングにして、ボートダイビングにおける不安払拭を目指したり。スキルが上手になることを目指すのではなく、あくまでゴールは不安払拭ですね。10年潜ってなくても、何の不安もない方もたまにいますから。
――ブランクダイバーあるある、みたいなものってありますか?みなさん似たところで躓くのでしょうか?
ここからは持論ですが、ブランクダイバーさんの9割は「なんとなく不安」だと思っています。 自転車と同じで、昔乗れた人はやっぱり乗り始めれば乗れる。ひと通り勉強した人なので、再び始めてみれば、やっぱりできるのです。スキルひとつひとつもできる。
だから、ちょこっと背中を押してあげる、そっと寄り添ってあげる、実はそんな小さなことしかしていません。
イメージとしては、日本人のほとんどの人が「英語喋れません!」っていうのと似てるかなー。 「I can’t speak English.」って、それ英語しゃべっているじゃーん!と。旅行で英語を話せた方がいいからって家で勉強すると、とんでもない量だけど、いざ旅先で買い物すれば目の前にモノがあるから身振り手振りが使えるのと似ている感じかな。
たとえば「マスクスクイズ」の対処法なんて実践では滅多にやらないから、ブランクダイバーさんじゃなくても忘れがちなんだと思うんです。「マスククリア」だってよく潜っている人だって、そんなに上手じゃない人もいる。でも、「マスクに水が少し入っても気にならない」とか、「気がついてもいないほどダイビングに夢中になっている」とか、そういうメンタルの部分。ダイビングはメンタルの部分の支えが1番重要だと思っています。
――不安の形が漠然としているからこそ、余計に怖くなってしまうのかもですね。ブランクを乗り越えて復帰したダイバーさんはやっぱり喜ばれていますか?
いい顔しますよー!「やっぱり楽しいですね」っていう言葉が1番嬉しいですね。「やっぱり」ということは、自分でもかつては楽しいと思っていたという証明ですからね。
――本当そうですね!それでは、とうとう最後の質問ですが、リゾート迷子ダイバーさんにメッセージをお願いします!
『海が君を待っている』SAKURAマリンで一緒に遊びましょう。
――ありがとうございました!
Xやブログでは、ダイバーに寄り添う着眼点やアイデア豊富な印象のあるAKARIさん。意外にも、ご自身がリゾート迷子ダイバーだったり、人見知りだったりとダイバーの悩みをよく知るインストラクターさんでした。
「どこで潜るかではなく、誰と潜るか」と言われる秘密がここにあるように感じました。私も今、1番一緒に潜ってみたい方!そのうちサイパンに遊びに行きたいと思います!