ダイバーの正体に迫る本企画、22人目はへしこさんです。よろしくお願いします!

へしこさんプロフィール

現在ダイビング歴16年のダイブマスター。経験本数は1900本超。ホームの海は川奈。印象的な海はパラオ。神奈川県在住の自由業。Twitter(@yasukichiko)ではダイビングなどについてつぶやき中。猫も好き。

泳げなくても海が好き。パラオでさらにその想いは強くなり、呼ばれるように海へ

――まず、ダイビングを始めたきっかけについて教えてください。

先にダイビングを始めていた人たちの話を聞いて、泳げなかったけど海が好きだったから思い切って講習を受けることにしたんです。「リゾートや夏の日本で、魚に囲まれて楽しむ遊びなんだ。簡単そう」って想像していました。講習1日目で打ち砕かれましたが(笑)。沈めない、耳抜けない、マスク外したら鼻から水入ると散々で、死ぬかと思いました…。

――OW講習は現在ホームである川奈で受けたのですか?

当時は海外がとても安かったので、グアムのS2クラブってところで講習を受けてCカードを取りました。値段優先でしたね(笑)。

――初めて海に潜ったときの印象を聞かせてください!

初めての時は…やっぱり、「わ!息ができる!!」ということに一番感動しました。講習用のビーチポイントだったので、お魚はダツと攻撃的なスズメダイしかいなかったのですが、白い砂と青い海はめっちゃきれいでした!

――グアムでの講習は順調に進みましたか?

インストラクターさんは限られた日数でがんばってくれたかと…ただ、5月にCカードを取得して、7月に初めて今のホームである川奈のダイビングショップに行った時、オーナーは「ファンダイビングではなく、体験ダイビングに変えてもらおうかな」と思ったそうです(苦笑)。

――海外だと、どうしてもタイムリミットがありますもんね…。

そうなんです。補習しましょうっていうわけにはいかないので。

その後、ホームのインストラクターさんに相談して、耳抜きについては病院を紹介してもらいました。沈めないのは、少しだけオーバーウェイトにして、BCと肺のコントロールで、とにかく動かず水中で浮いていられるように練習しました〜。周りの先輩たちが「100本超えたらものすごく楽しくなる」って言っていたので、「まず100本までがんばるぞ!」って半分意地でした(笑)。

――相談できるショップさんに出会えたのは大きいですね!ところで、グアムの海と日本の海とでは印象がかなり違いそうですね。

そうですね。川奈に最初に行ったのが7月の頭で、台風の影響もなく海は静かでした。透明度はグアムに比べると悪かったですが、入った瞬間、青い魚(ソラスズメダイ)が群れていて、「あ!グアムより魚いる!!」って思ったのを覚えています。あと、ヒメジがたくさんいて、「変な魚がたくさんいるー!!」って思いました。

2本目はボートポイントに入ったのですが、ゲージを見るのを忘れていて、安全停止中にガイドさんが私のゲージを見て、びっくりして「上がれ上がれ」と呼ぶのでついて行って上がったら、残圧ゼロでした。今思えば恐ろしい(笑)。

――ご無事で何よりでした…!その後も足繁く通われたんですか?

実は、その年のファンダイビングは2日、その次の年もたしか夏に2日か3日、秋にAOW講習とファンダイビングをグアムで2日とか。旅先で「たまに潜れればいいかな」って感じだったんです。

今でこそマクロもワイドもなんでも好きですが、はじめた頃は伊豆はマクロ中心であまり派手さがなくて、潜りたい欲はそこまで高まらなかったんですよね。カエルアンコウやネジリンボウ見せられても、まず止まっていられない、岩にしか見えない、耳が痛い、エアが無くなる、しか頭になくて。とりあえずガイドさんにOKサイン出していましたけど、物によっては存在確認さえしていませんでした(苦笑)。

その翌年2月にパラオに行ったのがきっかけで、そこからだいたい年100本潜るようになりました。ギンガメアジやバラクーダの群れ、マンタのクリーニングを見て、「もっとたくさん潜りたい」って思ったのが大きかったんです。ホントに水族館の水槽の中で潜っているみたいで。でも、他の人はラクそうに泳いでいるのに私は毎回エアギリギリ、浮き沈み激しい。「ここで潜るには練習しなきゃ!」って思いました。目的ある方がやっぱりがんばれますね!

――その後は川奈で経験を積まれたんですか?

そうですね、スキルアップの練習はほぼ川奈でした。ビーチは流れもなく穏やかなのですが、小さなドロップオフもあるので中層を泳ぐ練習もできるんです。巻き上げない練習するにも最適ですよ。ビーチエントリーなのに90パーセントの確率でウミガメ見られますしね!ボートポイントに行くと流れることもありますし。

雲見や神子元は150本超えてから行きました。あとは沖縄のケラマにたまに。パラオもその頃から年2回だったのがだんだん増えて年4〜5回くらい行っていましたね。現在はほぼ毎週土曜に潜るくらいです。

右も左もわからない初心者時代の経験からダイブマスターへ

――現在ダイブマスターとのことですが、経緯をお聞きしたいです!

AOWまでは初パラオ前に取って、しばらくはそのままでした。だいぶ経った後に、友だちが神子元で潜った時にワラサに巻かれて、ガイドさんだけいなくなりゲスト3名自力で浮上したそうで…レスキューを取るって言うので私もついでに。

ダイブマスターは、パラオや川奈で初心者の方と一緒に潜る時に助けてあげたり、悩みを聞いてあげたりできるといいなぁ、と思って。あったら役に立つかなぁと思って取りました。 アドバイスされた時に、アマチュアダイバーのランクの人に言われたら何となくイラッとするだろうし(笑)。よくスタッフと間違われますけど、お仕事ではやっていません。常連さんで長く潜りたい人たちをガイドするくらいです。

――初心者の相談のためにですか!そういう方がいてくださると、とても心強いです。そうしたいと思われたのはご自身の経験からですか?

そうですね、周りの人の影響が大きいと思います。初心者の時は右も左もわからず、超下手くそでエアの減りも早かったので、周りに迷惑かけるのが怖くて…。毎回同じチームで潜る常連の人たちに、「エア早いのですみません」って事前に言っていたんです。そしたら「大丈夫大丈夫、私も早いから」とか「30分以上潜れるなら問題ないよー」って言ってくれまして。ホントはそんなことないだろうに、です。

そういう「のんびり楽しくやろうや」な雰囲気の先輩たちがいた影響は大きいですね。ネガティブなダメ出しはしないし、でも、「まだ神子元は早い」とかスキルに見合ったアドバイスをいつももらったんですよ。生物への寄り方、離れ方とかも教えてくれました。

逆に反面教師にしているのは上から目線で相手のレベルに合わないアドバイスをするタイプのダイバーさん。たとえば「昔はハーネスで潜って肺のコントロールだけで浮力調節していた。今のダイバーは器材に頼っているから大したことない」と言われても…はあ、みたいな。あとは自分の撮りたい写真を撮るために、生き物を草の中から追い出す方とかも。初心者の頃は「え?そんなことしていいの?」ってびっくりしましたが、今なら怒ります(笑)。一緒に潜る人って大事ですね。

――いい先輩に恵まれたのですね!ホームがあることも重要だと思いますが、どのように見つけるのがいいでしょうか?

今言えるのは、ブログを毎日更新していて、ファンダイビングも講習もやってるダイビングショップなら長くホームにできるからいいかな、ってとこですかね。

狙いを定めて、ド迫力の大物を世界中の海で

――印象的だったダイビングについて聞かせてください。

まず、パラオで見た13枚のマンタの捕食とマンタトレイン。ある年の9月にマンタの捕食を見て、今度は11月によく見られるマンタトレイン狙いで行ったんです。お客さんが少ない時期だったので調査も兼ねてジャーマンチャネルに行き、夕方近くまで待ってからエントリーして。魚の群れを抜けると、マンタが連なって途切れることなくこっちに向かってくる!!13枚のうち8枚のマンタはつながっていました。

ダイバー図鑑

――迫力満点ですね!

100%じゃないですけど、時期と潮回りを合わせれば、パラオはいろんな魚の産卵行動見られるのも魅力です。開国したらいつかぜひ!

それから、次にマラパスクアでニタリを見られたこと!マラパスクアは普段は透明度が高くないらしいんですが、今のところニタリの遭遇率が一番高いんです。朝4時半集合で船に乗り、「言うてもなかなか見れないんじゃないの〜?」って半信半疑でポイントに着くと、ニタリが水面でジャンプ!急いでエントリーしてステーションに行ったら、2匹がグルグルと回ってて…毎朝1本だけそのポイントでしたが、入るたびに見られて感動でした!

ダイバー図鑑

頭の上を通っていったときは、飛行機みたいでした!そして、目がまん丸大きくて、めっちゃかわいい♡普通のサメはやっぱり若干凶悪なお顔に見えるけど、ニタリは萌えキャラでした!しっぽも長くて、もう、とにかくかわいい♡

続いて、シパダンでバッファローの大群と水面から水底近くまでの巨大バラクーダトルネード見られたこと!今はツアーを組めないので余程のことがない限り行けないシパダン。こちらも早朝から船に乗ってポイントへ。 エントリーしてドロップオフ沿いを進んでいくと、棚の上にものすごい密度のギンガメアジの群れ♡そして、その向こうに黒い塊あるなー、って思ったらカンムリブダイ(バッファローフィッシュ)の大群!!こちらもめっちゃ密度の濃い群れ!!それを堪能したらその先にはバラクーダの渦が…思わず中に入ったら吸い込まれていきそうなくらいグルグルしてくれました♡解禁になったらぜひ行って欲しいところです!

ダイバー図鑑

シパダンは泊まるところも水上コテージなので気分めっちゃ上がりましたよ♡1日6本潜って、毎日夜は8時には寝てました(笑)。

――次から次へとすごい♡こういった群れを見たいと思ったらどうやって旅行計画しているんですか?

知り合いがいるところは現地ショップのブログや現地ガイドさんと連絡とりあって、まだ行ったことないところは、旅行会社さんの担当者さんだったり、実際に行った人がいればその人に聞いたり、あとはネットの情報調べますね。ダイビング雑誌は潜りに行った先にあれば見てみたりします!初めましての場所は旅行会社おススメです。仲良くなると取りにくいツアーの情報とか先にくれますしね!

――なるほど!

次は、モルディブのクルーズで見たナイトマンタのフィーディング。いわゆる王道コースをめぐるツアーの中に入っているのですが、夕方クルーズ船の下に水中ライトを何個か置いて、船の上からも照明を当てると、プランクトンが大量に集まってきます。そのまましばらく待っているとマンタがご飯を食べにやってきて、目の前でずっとグルグルと回ってくれます♡ご飯に一生懸命になってるので、すぐそばまで来て頭をヒレで叩かれるくらい。めっちゃ興奮しました!

ダイバー図鑑

――この距離!近っ!すごいですね!クルーズも憧れます♡何日間くらい行かれたのですか?

クルーズ自体は5日〜6日乗船です。モルディブのクルーズは大体そんな感じかと。1日3本から4本潜りますが移動がないし、ここが重要なんですがご飯美味しい(笑)!なので疲れず、毎日いろんな島のポイント潜れるのでお得です♡マンタ→群れ→ジンベエ→ナースシャークの大群→マンタの捕食→マクロ→群れ、みたいな感じで(笑)。乾季はめちゃくちゃ流れるらしいですが…!

――ご飯は重要ですね(笑)。

日本の会社が扱っているクルーズ船は大概ご飯ハズレはないかと!カレー味以外もありましたし。

――それは心強いです!

最後はホームの川奈で見たサーディンランです!毎年夏の下げ潮の時にイワシやキビナゴが群れになって浅いところを回るようになります。それをカンパチやイナダの群れが突っ込んでくるのです。去年はそれを見たくて、大まかな予想を立てて潜っていたのですが、60分過ぎでそろそろ上がろうか、と思ったところで群れに当たり、そこから30分くらいずーーーーっとサーディンランを目の前で見られました! 地味な川奈のビーチでそんな光景が見られるのは、ある意味衝撃的でした!(動画はInstagramでチェックを!)

――これは圧倒されますね!いろんな海をご紹介いただきましたが、へしこさんが年間スケジュールを立てるとしたら、何月にどこで何を見ますか?

そうですね…

  • 1月 与那国でハンマー狙い &ソコロで絨毯マンタ、ハンマー、ジンベエ、ザトウクジラ狙い
  • 2月 奄美でホエールスイム & パラオでツノダシの群れ
  • 3月 パラオでツノダシの群れ、とイレズミフエダイの産卵&川奈でダンゴウオ探し
  • 4月 パラオでマンタの捕食狙い
  • 5月 モルディブでのんびりクルーズ
  • 6月 ブスアンガでジュゴン 神子元で出始めハンマー狙い
  • 7月 川奈でアオリイカの大産卵狙い 神子元でハンマー探し
  • 8月 川奈で季節来遊魚探し
  • 9月 神子元でハンマー探し&伊豆大島、八丈島で季節来遊魚探し
  • 10月 柏島でマクロ三昧
  • 11月 マラパスクアでニタリ シパダンで群れ三昧
  • 12月 パラオでマンタの捕食狙い

って感じですかね。お金いくらあっても足りない(笑)。

――こんな1年を毎年過ごしたいです♡

まだまだ行きたい海、会いたい生き物は尽きない

――今後行ってみたい海、やってみたいことはありますか?

行ってみたい場所はたくさんありますね!

やはり、 ソコロ。今年のGWに行く予定でしたが…。

ココ島では、ハンマーのクリーニング見たい!オーストラリアの南側ではリーフィーシードラゴン、ウィーディーシードラゴン見たい! バリ(トランベン)ではマクロ一眼撮影したい!カボサンルーカス(メキシコ)ではジンベエ、モブラの大集結見たい! プロテアバンクス(南アフリカ)では本家のサーディンラン見たい! ホエールスイムもやってみたいです。死ぬまでに行きたいところ全部行けますように(笑)

――盛りだくさんですね!では、最後になりますが、まだまだ不安が残るビギナーダイバーさんと、その周りの先輩ダイバーの方々にメッセージをお願いします!

そうですね、ビギナーさんには…耳が抜けなかったり、沈めなかったり、エアが早かったり、止まっていられなかったり、私下手だーって思うこともあるかもしれないけれど、自分のペースでコンスタントに潜っていればだんだん慣れてくるので、はじめの頃こそたくさん潜って!自転車と同じではじめは転ぶけど、一度身につけば少しブランク空いても潜れば思い出します!あとは自分に合うショップを見つけて、そこのインストラクターさんにいろいろ教えてもらいましょう。 一緒に潜るチームの人にも不安なことや聞きたいことあればどんどん聞きましょう!たまーに変な人いますけど、大概はいい人です!

スキルはファンダイブ中の5分だけ中性浮力の練習してみる、というように意識すると上達早いですよ。そして上達していけば、どんどん見られる世界が広がっていくので、さらに楽しくなります。いつかどこかの海で一緒に群れを追っかけられるといいですね。

ベテランさんには…みなさんされていると思いますが、同じチームで潜る初心者さんがいたら優しく迎え入れてあげると、きっとお互い良い休日が過ごせると思います!

自分もそうでしたが、初心者の頃は右も左もやっていいこと悪いこともわからず、不安マックスだし、でも潜りに来ているってことはきっと上手くなりたくて、楽しくて来てるので。

若い人たちが始めて楽しんで続けてくれないとこの業界先細りで、我々年寄りが潜る場所なくなっちゃいます(笑)。そして初心者さんたちにいろんなダイビング情報を教えて、洗脳してダイビング漬けにして、ご自分の大好きな海を見せてあげて、さらにダイバー人口増やしていきましょ(笑)?

もちろん、人それぞれ楽しみ方と真剣度合いが違うけど、みんな楽しみに来てるのは一緒のはず!

これからダイビングをはじめる方には…私は泳げず、足のつかない海は怖かったのに始めたのですが、もっともっと早くに始めれば良かったー、って後悔したくらいダイビングにハマりました。

時期を選べば伊豆でも真っ青な魚が絨毯みたいになったり、船に乗らなくてもウミガメがご飯食べているのを見られたりします。最初の一歩を踏み出すきっかけはいろいろですが、コロナが落ち着いて動けるようになったら、おひとりさまでもお友達と一緒にでも、海辺のダイビングショップに体験ダイビングに行ってみてください。やらずに後悔よりやって後悔!です。そこからさらに進むかはあなた次第!初めて潜るなら穏やかだし出入りやすいし川奈おススメです←宣伝(笑)!?

――ありがとうございました!

海が好きで、泳げないのに一歩踏み出したへしこさん。心惹かれるままに世界中の海へと赴き、たくさんの生き物に出会い、様々な経験を積まれても、まだまだ未知の出会いがある。海の生き物たちはもちろん、人との出会いも大切にされているのだなあと感じました。いちビギナーダイバーとして、「大丈夫!」と背中を押してくださる姿がとても心強いです!