ダイバーの正体に迫る本企画、6人目はかにたまチャーハンさんです。よろしくお願いします!

かにたまチャーハンさんプロフィール

現在ダイビング歴14年のインストラクター(PADI)。元ダイビングサービス勤務。現在は器材販売を行う。日々のつぶやきはTwitterにて更新中。4ヶ月の赤ちゃんを持つパパでもありプライベートではブランクダイバーだったが、9月にご夫婦でダイビング復帰。

「こんな世界で働けたら」高校生で初ダイブ、インストラクターを志す

――まず、ダイビングを始めたきっかけを教えてください。

16歳の夏休みに、ダイビング経験のある父に突然「近くにダイビングショップあるけど、やる?」と聞かれて、「できるの!?やるやる〜!」ぐらいの軽いノリで始めました(笑)。

実は、元々はダイビングって選択肢は自分の中になかったんですよね。自分からは遠い世界だと思っていたんです。でも、海が好きだったこともあり、毎年海に行って素潜りや釣りをしていたので、体験ダイビングは行わずにいきなりOW取得でした。

泳ぐのもわりかし得意だったので、実習はすんなり進みました。学科だけが辛かったです。僕はPADIで取得しましたが、以前のマニュアルは回答欄がすべて記述式でDVDもなくビデオテープ…部活から帰ってきて学科の予習をして眠くなって終わらない、の繰り返しでした(笑)。

――10代で始められたんですね!潜ってみてどうでしたか?すぐにハマりました?

ハマりましたねー!初めて潜ったときには「こんな世界に来ることができるなんて…」と感動でした!それこそ仕事としてダイビングを選ぶぐらいには人生が変わりました!

その頃は学生ならではの金欠で頻繁には行けなかったですが、インストラクターとして働くことはわりと早めに意識し始めました。教えてくれたインストラクターも楽しくてかっこよく見えますからね〜。「こんな素敵な世界で働けたら!」という憧れが強かったです。

ちょうど進路を決める時期でもあったので、ダイビングインストラクターを取得する専門学校へ行き、そのときに一気にAOW〜インストラクターまで取得しました。

――高校生で覚悟を決めたんですか!専門学校は通常のショップでの取得とどう違うのでしょう?

インストラクターを取得する前提なので、ショップでの取得と比べると時間をかけてじっくり進みました。でも、楽しいのは変わらないですよ。同じ仲間と2年間一緒にスキルアップしていくので、それはなかなか他ではできないことかもしれませんね〜。

専門学校生時代は、伊豆や千葉の海によく潜りに行きました。当時は特にこだわりはなくて、しいて言えばダイビングのスキルアップのために「とりあえず海に行きたい!」という気持ちが大きかったんです。それで、ショップツアーでそのときにおすすめされた海に行っていました。

――そういえば、きっかけをくれたお父さんとも潜ったりしたんですか?

父とも何度か潜りに行きましたよー!といっても、その後の父はサーフィンに目覚めて水面で遊んでることが増えましたね。

――え!お父さん(笑)!でも、今度はお父さんの後を追ってサーフィンを始めることはしなかったんですね。

そうですね〜。水の中にいる感覚が他の何よりも好きだったんだと思います!今ならサーフィンもいいかなと思いますが、やっぱり海に行ったら潜りたくなるので、サーフィンをするのはまだまだ先ですね。

素晴らしい海を楽しんでもらうために。できることを考え続ける日々

――専門学校でダイビングインストラクター取得後、ダイビングショップに就職されたのでしょうか?

インストラクターになってからは1年間ブラブラしてました(笑)。その後、オープンウォーターダイバーの講習をしてくれた地元のショップでインストラクターとして働き始めました。

――憧れの仕事に就いてみてどうでしたか?

インストラクターのCカードを持っているとはいえ、勤務し始めのころは右も左もわからず、きちんと教えなければというプレッシャーが大きくて「自分は向いていないんじゃないか」と思うことばかりで。

ガイドをするにもお客さんを安全に連れて帰ることで精一杯。ベテランダイバーさんと一緒のときはリクエストに答えないといけないという気持ちも加わって目が回りそうでした。

でも、お客さんの「楽しかった!」という一言でどんな苦労もへっちゃらでしたね。特に講習や体験ダイビングで初めて海に潜る方をお連れした時に、「また潜りたい!」と思ってもらえるように、あれこれ考えるのが何よりも楽しかったです!

――海だけでなく、お客さん思いなんですね。インストラクターの大変な面として、講習で海の厳しさを伝えることがあるかなと。ジレンマはありましたか?

ありましたね。たとえば、課題のクリア基準としては、「その時できた」ではなく、いつでもできるレベルになってもらう必要があります。そのために同じことを繰り返してもらうこともありました。ただ、限られた時間の中で課題をこなすだけで終わってしまったりすると、水中世界を満喫してもらえたのだろうかと思うこともあります。

それでも、ダイビングはリスクのある遊びですので、その講習が「無駄ではなかった、そのおかけでダイビングを安全に楽しめている」と思ってもらえるのが大事だと考えています。怖がらせるためではなく、「こういうリスクがある」という話をしたりもします。今練習していることがなぜ必要なのか、それを理解しないで練習してもきっと身につかないと思うんです。どんなに素晴らしい海でも、トラブルがあって怖い思いをしたら楽しくないですからね!

――レジャースポーツには一定のリスクがつきものだと思うのですが、ダイビングのリスクは他のスポーツと違いはありますか?

小さなトラブルが大きな事故に直結しやすいことですね。「むせる→パニック→事故」って陸上だとほぼありえないですが、水中なら事故につながる可能性は高いです。

大切なのはパニックになりそうな気持ちと向き合って、落ち着いて対処すること。パニックにさえならなければ問題ないことも多いのですが…それができないダイバーさん、多いと思います。

ただ、それはダイバーさん本人に非はなく、講習を担当したインストラクターの責任かなと。リスクが大きいからこその学科を含めた講習ですので、そのへんはしっかりやってほしいな〜…なんて思います。

もちろん、きちんと講習をしているインストラクターがほとんどなので、ダイビングの事故率ってすごく少なくて、ボウリングと一緒らしいです!

――小さなトラブルに対処するスキルを講習で身につけることが大切ですね。ところで、せっかくCカードを取った後、海から遠のいてしまう方もいるようです。

僕の感覚として、ダイビングが長続きするのは「目標や目的を持っている人」です。この海で潜りたい!ジンベエザメに会いたい!写真を撮りたい!など。

ダイビングを始めるきっかけとして最初から目的を持っている方もいますが、「なんとなくやってみたかったから」という方も多いんです。そういう方が「ダイビングは楽しい!もっと潜りたい!あれこれしてみたい!」と思う何かを見つけると、長く続けていけるように思いますね。

僕の場合、ダイビングを始めた頃は「インストラクターになりたい!この水中世界をいろんな人に楽しんでもらいたい!」という目標が原動力だったのだと思います。今はもうやりたいことが多すぎて困っちゃいますが(笑)。

――なんとなくダイビングを始めた方が目的や目標を見つけるために、工夫されていたことはありますか?

お客さんに、とにかくいろんな話をすることですね。興味を持ってくれる話題を探して、できるのであればその海を実際に案内して。生き物の紹介も名前だけじゃなく、面白い生態があれば合わせて話したり…人によって千差万別です。

ただ、インストラクターとして一番嬉しいのは「一緒に潜りに行きたい」と思ってもらえることなので、全然関係ない話を一日中してることもありました(笑)。

――かにたまチャーハンさんと潜るの楽しそうです!

そんなふうに言って頂けるのはすごく嬉しいです!

僕なんかまだまだで、もっと素晴らしいインストラクターさんはたくさんいます。だけど、自分ができる精一杯のことでお客さんが喜んでくれるならと常々思っています。

自分の好きな海を楽しんでもらえるのはやっぱり嬉しいですからね。今は転職しましたが、結局同じ業界です。離れられないですね。

夜光虫、ブルーウォーター、透明度0m。どのダイビングも「また潜りたくなる」

――これまでで印象的だったダイビングについて教えてください。

3つほどあるんですが、まず、西伊豆・獅子浜でのナイトダイビング。AOW講習でインストラクターとしてお客さんと一緒に潜ったんですが、夜光虫の量がものすごく体が光り輝くほどでした。アナ雪ごっこやらティンカーベルごっこで盛り上がりました。

日中も同じポイントで潜っていましたが、透明度はあまり良くなく…ただ、透明度悪い=プランクトンが多いということなので期待していたところ、想像以上の夜光虫でした。

――幻想的だったでしょうね。ということは、「にごってる日はナイトダイビングを楽しむ」って考え方もアリなんでしょうか?

にごりの種類によりますね。大雨の後のにごりは川から泥っぽい水が流れ込むせいで、夜光虫が多くなるわけではないので。

関東近郊だと4〜6月ぐらいはプランクトンが増えたにごりになり夜光虫も増えます。昨年は鎌倉のあたりで赤潮が発生して、波打ち際が夜光虫でブルーに輝く様子がニュースになっていましたね。

――なるほど!時期と赤潮に注目ですね。

続いて、西伊豆・田子でのブルーウォーターダイブ。黒潮のど真ん中の外洋なので水底はまったく見えない。透明度も良すぎて(50m〜)本当に宙に浮いてる感覚でした。あれはすごい!またいつか行きたいです。

――ブルーウォーター、すごいですよね!私も須江で潜りました。ただ、底の見えない深さとドリフトダイビングなので、ある程度の経験とスキルが必要ですよね。

大前提として、自分勝手に動いて他のゲストさんに迷惑をかけないことが大切です。そして、自己管理スキルがしっかりしていないとだめですね。中性浮力はもちろんのこと、多少のトラブルなら自分で解決できることが大事です。潜ることで精一杯になってしまうと楽しめないですから。

経験本数ってあてにならなくて、100ダイブしていても自己管理できない方はいます。なので100ダイブの方はお断りして、30ダイブの方はOKなんてこともありえます。

――たしかに、「潜るだけで精一杯」は楽しくないです!ちなみに、ブルーウォーターを100%楽しむために持っていくといいカメラなどありますか?

予算関係ないなら一眼レフでフィッシュアイレンズですね(笑)。

ですが、TG-5でも設定によってはきれいに撮れますよ!水中ワイドモードで濃いブルーを表現したいのであればEV(明るさ)を-1.0、透明感を出したいのであれば+0.7にするだけで雰囲気が変わります。

水面を一緒に写し込むのであれば水中HDRモード…ざっくり言うと、複数の写真を自動で合成して明るいところと暗いところが均一な写真にしてくれるモードですが、それもいいかもしれません。

――TG-5でも!?次はぜひ試してみたいです!あの青の世界を表現できたら素敵です。

カメラの設定次第で写真の雰囲気変わるので、ぜひいろいろ試してください。わからないことあればリプ貰えれば答えられる範囲でお伝えしますよ〜。

そして最後は、作業ダイバーとして初めて経験した透明度0m。

――作業ダイビングはCカードとは別に潜水士免許が必要なのでしたっけ?

潜水士免許が必要ですね〜。でも、日本国内でレジャーダイビングを職業にするには潜水士免許必須なので、みなさん持っているはずです…きっと…。

作業ダイビング自体は他にもいろいろやっていたんですが、その日は水底に設置されていた機械の点検でした。水底は泥が積もっていて、そこに埋もれている機械を掘り出さないと点検できないのですが、掘ればもちろん泥が舞い上がってしまい、そのまま透明度0に…。マスクの横につけているライトの光が見えなくなりました。

ダイブコンピューターも見えないので、マスクのレンズ面にコンピューターを押し当てて見てました(笑)。ただ、ゲストがいるわけではないので気持ち的には「あー…見えないなー…」ぐらいでしたね〜。

――すごい世界…作業自体も大変そうです。特別な器材は必要なんですか?

僕が行っていた作業潜水には特別な器材は必要なかったですね〜。しいていえばフルフェイスマスクぐらいです。もちろん特殊なものが必要な作業もあります!

ROVという水中ロボットもありますが、コストを考えると人の手のほうが早くて確実なんだと思います。

――いろんな経験をされているのですね。さて、3つ教えていただきましたが、私から伺いたいのが先日の「復帰ダイビング」について!実はかにたまチャーハンさん、「ダイビング自粛中」だったんですよね?

今年は奥さんの妊娠・出産があって、僕もプライベートでのダイビングは自粛していました。奥さんもダイバーなので「復帰は一緒に」を目指していたんです。奥さんのダイバー歴は2年ぐらいでしょうか。楽しい時期に妊娠発覚だったので、潜れないことに対しては鬱憤が溜まっていましたね。

――よくわかります。私もダイビングを始めて2年目で妊娠したので。赤ちゃんはめっちゃかわいくて大好きなんですが、ダイビングはしたくて(笑)。

ですよね〜。復帰は少し早かったかもしれませんが、近場で潜りに行けてよかったです。家族3人で海に行って、奥さんと僕と交代で娘を見て。完母なので奥さんが大変ですが、それでもいいということで行ってきました。

奥さんは1年ほどのブランクだったので、元の職場に頼んでリフレッシュダイブをしてもらいました。奥さんは2ダイブ目はボートでがっつり楽しんでました!

一番の心配は娘でしたが、こちらも一日中ご機嫌。天気もよく、過ごしやすい気温で海を見ながらお散歩してました。なじみのポイントでもあったので、現地サービスのスタッフさんにも良くしてもらって快適に過ごせました。

ただ、荷物はすごく多かったです。あれもいるかな?これもいるかな?と考えていると器材よりも大荷物に…(笑)。

――無事に念願のダイビング復帰ができてよかったですね。私も再チャレンジしようと勇気が持てました。やっぱり潜りたい!

僕もあまり時間のない中で1ダイブだけだったので大満足ではないですが、やっぱり楽しいですねー!

インストラクターとしての仕事も含めて、今までそれなりに潜ってきましたが、楽しくない海なんて一度もなかったんですよね。自然相手なので、透明度が悪くても見たかった生物がいなくても、次はきっと…!と思ってまた海に行きます。また早く潜りたいです(笑)。Mayuさんも復帰ダイビング、ぜひリベンジしてくださいね!

水中世界は一期一会。各地の海に夢を抱きながら、これからも海と生きていく。

――では、今後やってみたいこと、行ってみたいことなど教えてください。

今回は奥さんと交代でダイビングでしたが、近々、元の職場のスタッフがダイビング中子供を預かっていてくれるかもしれないので、もし叶えば奥さんと一緒に2ダイブできる予定です!

もちろん、娘が大きくなったら親子ダイブもやりますよー!お父さん嫌いって言われないように親切丁寧な講習を行いたいと今から心掛けています。

行ってみたいポイントはたくさんあります。国内であれば北海道・支笏湖、石川県・能登半島、沖縄県・波照間島…国外であればメキシコ・カンクン&ユカタン(セノーテ)、ミクロネシア・ジープ島…奥さんがOW取得したのがグアムなので、そこにも一緒に行きたいですねー!

全部行くのは夢のまた夢ですが、夢を見るのは好きなだけできるので想像を膨らませてます(笑)。

――ダイビングは長く続けられるし、夢を持ち続けられるからいいですよね。では、とうとう最後の質問になりますが、これからダイビングを始めようか迷っている人にメッセージをお願いします!

水の中で呼吸をして、魚と一緒に飛ぶように泳げるのはダイバーだけの特権です。今までに体験したことのない世界が広がっています!

そして水中世界は一期一会。同じ海に潜っても同じ出会いはありません。思い立ったときに始めてみれば素晴らしい出会いがあるはずです。

今はネットでいろいろと調べることもできますが、悩んでいるなら思い切ってスタートしてみてください。その一歩が踏み出せればきっと世界が大きく広がるはずです!

――ありがとうございました!

16歳でダイビングを仕事にする決意をし、海とともに生きてきた、かにたまチャーハンさん。海だけでなく人を喜ばせることも好きで、常に海と人に向き合って生きてこられた姿が印象的でした。親子ダイブ、実現してくださいね!